歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

アメリカ歯科医師会 マスクとフェイスシールドの暫定ガイドライン

この資料のリンク

https://success.ada.org/~/media/CPS/Files/COVID/ADA_Interim_Mask_and_Face_Shield_Guidelines.pdf

目次

このガイドラインを3行でまとめると

  • 米国内の厳しい現状を反映し、最高水準のPPE装着を求めている
  • N95マスクと同等の機能を有すると考えられるマスクの使用を許可している
  • サージカルマスクを使用する際は、レベル2以上のものを使用する 

 

背景

COVID-19のパンデミックに際して、マスクに関する暫定的な情報を周知するために作成されたものです。

米国国内向けのものですから、ADAの暫定ガイダンスに準じた内容になっています。

従って、日本の歯科医師もこのガイドラインに従うべきだ、という主旨の発信ではありませんのでご承知おきください。

ADA暫定ガイダンスはこちら 

masaomikono.hatenablog.com

 

内容

概論

歯科治療時の曝露リスクを減らすために、利用可能な最も高いレベルのPPEを使用すること

”利用可能な”という点、また”最も高いレベルのPPEを”のところが、米国内の苦しいPPEの不足と感染の蔓延を反映しているように思えます。

 

マスクの種類に関わらず、ゴーグルやフェイスシールドを併用しない場合は感染リスクは「最も高い」ということを理解すること

 これは言うまでもありませんね。

 

患者の持つリスクと治療の持つリスクを専門家として判断すること

最後は自分で責任持ちなさい、というところは日本と同じですね。

 

COVID-19の症状がない患者でも感染しているかもしれないと考え、全ての患者が感染源となりうると考えるべきである

標準予防策(スタンダードプリコーション)そのものです。

 

マスクの種類と歯科医療従事者のリスクレベル

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KN95にPFF2やDS2が含まれていますが、この二つに限ってはN95と同等と考えて差し支えありません。

KN95のリスクレベルが Low と評価されていますが…

masaomikono.hatenablog.com

こちらのブログ記事でも言及した通り、KN95マスクには信頼性に疑問符がついています。

サージカルマスクについて

サージカルマスクの品質はASTM(American Society of Testing and Material)という米国の国際標準化・規格評価団体によって規格が定められています。

 

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ASTM F2100-11: Standard Specification for Performance of Materials Used in Medical Face Masks, 2011.

 

医療機関での使用に耐えうるのはレベル2・レベル3に相当するものとされています。

なお、日本にはサージカルマスクの規格はありません。

細菌濾過率(%)[BFE]:細菌を含む、平均3μmの粒子が濾過された割合

微粒子濾過率(%)[PFE]:平均0.1μmの微粒子が濾過された割合

呼吸抵抗性(mmH2O/cm^2):呼吸のしやすさ

血液不浸透性(mmHg):液体(血液等)が飛散した時、どの程度の圧にまで耐えられるか

延燃性:電気メスなどから引火した時も燃えにくさ(燃え広がりにくさ)、1〜3で数字が小さいほど燃えにくい

歯科医院向けの通販サイト等でも、サージカルマスクの案内には[BFE][PFE]は記載されていることが多いので、参考にしていただければと思います。

 

まとめ

マスクがあれば全てを解決するわけではありません。

今に始まったことではありませんが、本ガイドラインにもあるとおり、眼を保護する防護具の装着は不可欠です。

マスクなどのPPEは、装着の仕方、離脱の仕方、装着・離脱のタイミング、手指衛生などが正確になされてはじめて機能します。