歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

米国歯科衛生士会 職場復帰に関する暫定ガイダンス

この資料のリンクはこちら

https://www.adha.org/resources-docs/ADHA_TaskForceReport.pdf

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この資料を3行でまとめると

  • 米国内の商業活動再開に際して、米国歯科衛生士会(ADHA)が会員を守るために発表したもの
  • 既存の感染対策のおさらいが大半、参考になる部分もあるが、参考にならない部分もある
  • 日本に適応しようとすると明確に間違っている部分もあるので注意が必要

 

 

背景

アメリカでは州により商業活動を再開する向きがあります。

それについての是非は他国の話ですから何も申し上げることはありませんが、歯科医院の業務開始に際して、米国歯科衛生士会(以下、ADHA)から職場に復帰(仕事を再開)する場合のガイダンスが出されました。

この内容に関しては既に、一部である種のご意見があるようですが、私は主に感染制御の観点から読み解いていこうと思います。

前提として、人口100万人あたりのCOVID-19による感染者数/死亡者数(5月5日時点)は、

  • 米国      3745/432人
  • 日本      122/4人

となっています。よって、米国では目の前の患者さんが無症状・発症前のCOVID-19患者である可能性が日本よりも高いことを考慮して解釈する必要があります。

つまり、日本で従事している歯科医療従事者からすると「そこまでやる!?」という内容があっても不思議ではありません。

また同様に、このガイダンスの内容をそのまま日本に当てはめると「やりすぎじゃない??」となる可能性もあります。

したがって、このガイダンスの良い点は大いに参考にし、そうでない部分は採用せず、状況が悪化した場合の参考とする、といったバランス感覚が大切です。

いつものことですが、本ブログ記事は「日本もこのガイダンスに従うべきだ」という意図での発信ではありませんのでご承知おきください。

 

内容

前文

ADHAは、歯科衛生士や他のスタッフ、患者を守るために、CDCの暫定ガイドラインを改定があるまで引き続き支持する

CDC暫定ガイドラインはこちら

masaomikono.hatenablog.com

CDC暫定ガイドラインは、

  1. 緊急性のない歯科治療は延期する
  2. 緊急性のある歯科治療であってもエアロゾルの発生を伴う治療は避ける
  3. 社会における感染拡大を防ぐこと・医療資源の消費を抑制すること

を歯科医療従事者に求めていました(拙ブログの「3行でまとめると」より)。

ADHAとしては職能団体ですから、リスク回避行動を取るのは当然のことと理解できます。

しかし、多くの州が商業活動の再開に動いているため、ADHAとしては歯科衛生士が仕事へ戻るための暫定的なガイダンスを作成した

とはいえ全体の流れに逆らうことは出来ません。そこで会員を守るためのステートメントを出すこととなったようです。

ライセンスを持つ医療従事者として、歯科衛生士には自分が担当する患者や関係するチームメンバーの健康と安全を確保するために、最高水準の医療を維持する責任がある

全くおっしゃる通りです。

ただ、現時点で”最高水準”の医療、となると、果たして何が正解なのか分かりません。

「ADHAとしてはこれくらいの水準じゃないと会員を働かせられない」とする暫定基準を示すことを匂わせる表現のようにも感じられます。

以下の考慮事項は、CDCやOSHA、ADA、OSAPなどのガイドラインや規制、主要な情報を利用して作成されたものである

何が正解なのか分かっていない中ですから、「これくらいの水準じゃないと」と言う根拠がなくてはなりません。

ADHAは、全ての歯科衛生士に対して

「医療関連感染のリスクや医療従事者における病気や怪我のリスクを減らすために、最新のガイドラインに従うこと

とした Standards for Clinical Dental Hygiene Practice* に従うよう勧告する

https://www.adha.org/resources-docs/2016-Revised-Standards-for-Clinical-Dental-Hygiene-Practice.pdf

最新のガイドラインとはすなわち、先ほどのCDCやOSHA、ADA、OSAPなどのガイドラインと主張しています。

最新のガイドラインに従うことは元から「歯科衛生士業務の基本指針」(とでも言うのでしょうか?)で決まっていたことだそうです。

この指針については私は歯科衛生士ではないので詳細は分かりかねます。お詳しい歯科衛生士の方いらっしゃいましたらご連絡・ご解説いただけますと幸いです。

また、歯科衛生士は ADHA Code of Ethics** を読み直し、仕事に戻る前に自分の医療過誤保険が最新のものであるか確認することを勧告する

** https://www.adha.org/resources-docs/ADHA_Code_of_Ethics.pdf

このあたりは米国らしいですね。

この「ADHAの医療倫理指針?」についてもお詳しい歯科衛生士の方いらっしゃいましたらご連絡・ご解説いただけますと幸いです。

COVID-19パンデミック期間中における歯科治療・歯科保健指導の安全な提供に関する規制や勧告、義務は州ごとに大きく異なる。

州別の対応のリスト*** には最新の勧告や義務の情報と、歯科衛生士の職域への影響がどれほどあるのかという情報が含まれている

*** COVID-19 State Mandates and Recommendations

日本でも対応や自粛の程度は都道府県ごとに異なります。

状況は急速に変化しており、ADHAも利用可能な最新情報のアップデートを行い続ける予定である

職場復帰のためのチェックリストがこのガイダンスの最後に付属している

チェックリストは、あなたが仕事に戻ることが適切であるかどうかを決定する内容となっている

それをもとに専門家(医師)の判断が必要である 

こちらも翻訳して最後のほうに記載いたしますので、ご参照・ご活用ください。

開院前の準備、対応について

雇用者とスタッフの全員と会い、以下のことについて話し合う:

・現在のPPEの供給と、新しく必要になったものの供給について

・COVID-19のスクリーニングの方法

・歯科医院内でエアロゾルの発生を削減・排除する方法

・患者と歯科医療従事者のソーシャルディスタンスを保つ方法

・患者間の適切な消毒のためのアポイントの取り方の変更

COVID-19の発生により、これまでの感染対策に+α した部分を継続するための体制を確保するように求めています。

ここは私も同意見です。5月4日の総理会見、専門家会議の会見にもあった通り、日本の対応は有効な治療法やワクチンが開発されるまでの間、SARS-CoV-2との共存をはかるものへと大きく変更がなされました。

総理会見はこちら

専門家会議会見の内容はこちら

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627553.pdf 

したがって歯科医院における+α の感染対策は、残念ながら今後も必要です。その準備をしっかり整えておき、スタッフ同士の軋轢を生まないようにすることは重要だと思います。

情報を共有し、あなたが担当する患者と歯科医療チーム全体の健康と安全を確保ための最良の決断を行う

CDCの暫定ガイドラインはあなたを助けてくれるでしょう

”最良の決断”が何か分からない状態でCDCの暫定ガイドラインを参照すると、

  1. 緊急性のない歯科治療は延期する
  2. 緊急性のある歯科治療であってもエアロゾルの発生を伴う治療は避ける
  3. 社会における感染拡大を防ぐこと・医療資源の消費を抑制すること

となります。繰り返しますが、私がこうしろ、と言っているのではありません。

言っているのはADHAです

米国国内の情報を定期的にモニタリングし、診療に影響する主要な勧告をスタッフ全員に知らせる人を決めておくこと

これはいい方法だと思います。ただ公的機関の情報に限るほうが良いでしょう。

学術論文を働きながらキャッチアップすることはかなり厳しいと思いますし、報道はあてにしない方が賢明です。

PPEの在庫や他の感染管理の供給について指揮をとること

もし感染制御のための適切な供給を受けられないのであれば、診療再開という決定の再検討が必要である

いくら何でも防護具がない状態で診療をさせる歯科医師はいないと思います。。。

それでも言わなきゃいけない事情でもあるんでしょうか?よく分かりませんが。

仕事に戻る前に、全スタッフは可能であれば州や地域の規制に従い、COVID-19の検査を受ける必要がある

検査で陽性だった人や、症状のある人は出勤せず、検疫のプロトコルに従う必要がある

これは米国の場合です。

日本では当然検査を受けること(陰性の証明)は出来ませんから、症状のある人は出勤しない、だけが該当します。 

COVID-19の有病率とリスクレベルを評価するために、地域の保健所や州当局と連絡をとってください

もしCOVID-19の発生件数が急上昇した場合、診療再開という決定の再検討が必要である

COVID-19の発生件数が急上昇した場合、急を要さない治療を止めることが重要になる時があるので、リスクレベル、発生件数を継続的にモニタリングする

日本の場合は都道府県ごとに対応が異なるのでしょうけど、COVID-19の発生件数が急上昇した時に何らかのアナウンスが発せられることになるのでしょうか。この辺りは現時点(5月7日)では決まっていません。 

全スタッフが新しい日常業務や処置方法を実践する(練習できる)soft opening(部分営業、一部営業の意)を考慮してください

試行錯誤する時間を設けるよう求めています。

 

職場環境

全スタッフにスクリーニングのための質問をし、非接触体温計で検温をし、その結果を毎日記録する

スクリーニングの質問に応用できる質問票を最後に付録しておきますのでご活用ください。

無症候患者や発症前の患者からの感染に対処するため、歯科医院に入ってくる人(患者や歯科医療従事者)にはCOVID-19の症状の有無にかかわらず、マスク(布マスクも含む)の着用を求める。

専門家会議が提言した「新しい生活様式」にも「マスクの着用」と記載がありました。

専門家会議会見の内容はこちら

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627553.pdf 

歯科医院に入る前に、全員に熱やCOVID-19の症状のスクリーニングを積極的に行う 

既に行っているものを継続することになるかと思います。

毎日の業務前に、全スタッフはCDCガイダンスに沿って、熱やCOVID-19の症状のスクリーニングを積極的に行う

こちらも同様、現在行っているものを継続することになろうかと思います。

CDC暫定ガイドラインはこちら

masaomikono.hatenablog.com

通常のスクリーニングでもしスタッフに症状がある場合、家に返し、検査を受けさせたり、検疫(14日間の出勤停止)を行う必要がある

もし風邪症状やインフルエンザ、COVID-19の症状がある場合、職場に来てはいけない

とにかくスタッフの体調管理が重要になってきます。

検疫に関しては政府からのアナウンスが今後あるといいのですが…(休業補償も含めて) 

チームメンバーは職場で自分の靴を脱ぎ、また靴は毎日消毒しなければならない

職場用の履き物が必要だ、とするのは米国らしいですね。

そのまま家に入りますから、家庭内への汚染も気にしているのでしょう。

処置を行わない時には、他のチームメンバーや患者から6フィート(1.8メートル)のソーシャルディスタンスを確保する

クラスター認定された滋賀県の歯科医院は、この視点があれば防げたのかもしれません。

休憩室や更衣室の使用など、個々の歯科医院に合わせた対策を行うべきでしょう。

全てのチームメンバーは、治療エリアにいない時でさえ、アイプロテクションとマスクを装着するべきである

これはどうでしょうか?

マスクはさておき、診療所の構造にもよりますが、治療エリアでなければアイプロテクションは不要でしょう。

歯科衛生士業務では口腔内バキュームを使用するべきである

口腔内バキュームが必要な時は、アシスタントがつくべきである

ADAの暫定ガイダンスでは確かに、エアロゾルの発生する処置(=口腔内バキュームが必要な時)は4ハンドが望ましいとしています。

これを根拠に4ハンドで行うことを求めています。

診療室は全ての処置後に適宜消毒されるべきである

アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる清拭を意味しています。

これに換気を加えるべきでしょう。

なぜかこのガイダンスでは換気の重要性があまり強調されていません。不思議です。

共有エリア、待合室やドアノブ、椅子や休憩室などは頻繁に清掃、消毒を行う

必要のないもの(おもちゃや雑誌など)は汚染のリスクとなることから待合室から撤去する

 これは既に取り入れられている歯科医院が多いのではないでしょうか。 

 

受診する前の患者対応について

受診する前に全ての患者に電話やビデオ通話によるスクリーニングを行い、薬やアレルギーを含む健康に関する情報を更新する

加えてCOVID-19に関連した以下の質問を行う

  • COVID-19患者と接触したか
  • COVID-19患者から曝露を受けたか
  • COVID-19感染の兆候や症状がないか

質問項目については後ほどお示しする資料(COVID-19スクリーニング用質問票)をご活用ください。

患者には診療の時間が来るまで歯科医院の外で待つよう指示する 

待合室もソーシャルディスタンスが保てればいいと思うのですが…

咳エチケットができなかったり大声で電話をしてしまう方もあちらにはいらっしゃるので、その飛沫が付着したところからの接触感染のリスクを想定しているのかもしれません…

空気感染を想定しているとしたら「やりすぎ」でしょう。

日本(の民度)では個々の歯科医院の状況に応じた対応でよろしいかと思います。

特別な介助が必要でない限り一人で来るようにさせる

可能な限り待合室にいる時間を最小限にするべきである

これは妥当だと思います。既に取り入れていらっしゃる歯科医院もあることでしょう。

私物は車や待合室に置いておくようにアドバイスする

それらのものは処置室の中に持ち込むべきではない

その私物にSARS-CoV-2が付着していることを想定しているのでしょうか?

もちろんリスクはゼロではありませんが、正直何を目的としているのかちょっとよく分かりません。

歯科医院に来た患者に対して(アルコールによる)手指消毒を行うか、可能であれば(石けんと流水による)手洗いを行うように要求するべきである

アルコールによる手指衛生の方が目に見える汚れがある場合やトイレを使用した後を除き、石けんと流水による手洗いよりも効果的です。

通常はアルコールによる手指衛生を要求すれば十分です。

患者の付き添い人に対しては、患者の治療が終了するまで治療エリアから出るように依頼する

個々の事例でご判断ください。

38℃以上の発熱を含め、どんなに症状が軽くても、症状を示す患者の診察は断り、医師の診察を受けたり救急外来を受診するよう求める

これを日本に適応するのは誤りです。

発熱の原因が歯科的問題にある場合があるため、発熱があるからといってすぐに診察を断ることはADAも認めていません。

masaomikono.hatenablog.com

しっかりと問診を行い、歯科的問題によるものと考えられるなら歯科医院で対応すべきです。

ここは日本の歯科衛生士の皆さんも惑わされないように気をつけてください。

こうした患者さんが救急部門を受診し、最前線の医療資源を圧迫することは避けなければなりません。

(追記)

FacebookでMie Choeさんからご指摘をいただきました。

アメリカではDHが独立してクリニックを持っている人がいますので、DHは今のところ、限りなく感染が疑われる患者はみない。という前提の元ガイダンスが作られていると思います。

なるほど、こうしたクリニックであれば「発熱や他の症状などCOVID-19を疑う患者の診察は断る」としたこの勧告は妥当なものだと思います。

米国内向けのガイダンスですから、米国内の事情に沿ったものであり、米国内では誤ったものではありませんでした。同時にこれを医療制度の違う日本に適応することができないことも明らかです。

従って、はじめ「これは誤り」としておりましたが、「日本に適応するのは誤り(下線部)」と訂正いたします。失礼いたしました。

もし記入や署名をする書類がある場合、患者にペンを共有しないように指導する

(使用後に消毒すればいいんでない?)各自ご判断ください。

(追記)

下線部についてもMie Choeさんにご指摘をいただき、修正いたしました。

本当にありがとうございました!

PPE

歯科衛生士を含む歯科医療従事者はCOVID-19の曝露リスクがとても高い

したがって、可能な限りハイレベルな防護具を使用することは極めて重要である

この後「可能な限りハイレベルな防護具」、N95マスクについて記載されています。

以下の定義のもと、勧告を出す

  • クリティカルタスク・・治療中に発生する全ての業務(仕事、作業、行い:functions)
  • ノンクリティカルタスク・・処置室の清掃や器具の滅菌、器具の運搬など

治療時とそれ以外、の分類です

クリティカルタスクにおける呼吸器保護の最も良い方法には、カスタマイズされたN95マスクの使用が必要である

CDCやADAがN95マスク求めているのは、少なくともエアロゾルが発生する手技に限定されます。それ以外で使用することは乏しい医療リソースを浪費することになりかねません。

社会的な観点からはあまり良い勧告とは思えません。

ただADHAとしては歯科衛生士の権利と利益を守ることが主目的ですから、このような勧告を出すことは立場上仕方ないことなのかもしれませんが、残念です。

使用前にはフィットテストとシールチェックの訓練が行われなければならない

フィットテストキットは市販されている
製造元の指示に注意深く従って使用する

呼吸器保護具のフィットテストは:

・雇用者や第3者機関が行う

・年に1回は行う

・呼吸保護具の周囲からのリークがあるのかどうかチェックする

出来ますか?もし実施をご希望でしたらご相談ください。

ノンクリティカルタスクはN95マスク以外のマスクを使用する

患者ごとに呼吸器保護具は廃棄する

ここは妥当です。マスクの供給量次第ですが。

N95マスクも、FDAが承認したフルフェイスシールド付きのサージカルマスクが使用できない場合、治療を行うのは安全ではない

ここも”エアロゾルが発生する治療”、だったはずです(その是非はともかく)。

こうした拡大解釈に惑わされないようにしてください。

サージカルマスクは、診療室や治療エリアを出てから、もしそこにドアがあるなら閉めてから捨てる

歯科治療後は飛沫やしぶき、エアロゾルの曝露を受けたことを考慮して:

  • 呼吸器保護具やサージカルマスクを外して廃棄する
  • 外した後は手指衛生を行う

この通りです。

COVID-19ではない患者に救急歯科処置を行う時のPPEはCDCガイダンスに従う

呼吸器保護具またはサージカルマスク

診療室や治療エリアに入る前に、以下のうち一つを装着すること:

  • N95マスクや高い防護水準が求められる他のディスポーザブル呼吸器保護具、PAPR、防毒マスク
  • もし上記の呼吸器保護具が利用できない場合、サージカルマスクとフルフェイスシールドを利用すること
    そのマスクがFDAの認証をクリアしているか確認すること

繰り返しますが、CDCの暫定ガイドラインやADAの暫定ガイダンスがN95マスクの装着を推奨しているのは”エアロゾルが発生する手技”の場合です。

 マスクについては以下の2つの記事をご参照ください

masaomikono.hatenablog.com

masaomikono.hatenablog.com

 

エアロゾルが発生する手技を行っている間(例えばハンドピースや3wayシリンジ、超音波スケーラー)は、以下のうち一つを選択すること:

エアロゾルが発生する手技”ですから(その是非はともかく)CDCやADAの暫定ガイドラインと矛盾しません。

アイプロテクション(眼の防護具)

診療室や治療エリアに入る前、アイプロテクションを装着する
(アイプロテクション:顔の前面や側面を覆うゴーグルやフルフェイスマスク)

側面を覆う、と言う点は大切です。

個人の眼鏡やコンタクトレンズはアイプロテクションとして適当ではない

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/dental-settings.html

言うまでもないことです。

側面が保護できるゴーグルはクリティカルタスク、ノンクリティカルタスクの両方で装着するべきである

再利用できるPPEは患者ごとに石鹸と流水や消毒用ワイプで消毒する

治療中であっても、サージカルマスクが目に見えて汚れたり、濡れたりした場合は取り換えるべきである

これらはその通りです。

PPEを装着または離脱するための、清潔域と不潔域とに明確に分けられた場所を用意する

この場所を確保することは大切です。動線も含めて考慮する必要があります。

ユニフォーム等の洗濯にはBloodborne Pathogens standard(29 CFR 1910.1030)****の記載の該当する部分にしたがってください。

**** https://www.osha.gov/laws-regs/regulations/standardnumber/1910/1910.1030

具体的な方法は

  1. 80℃の熱水に10分漬ける
  2. 0.05〜0.1%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に30分漬ける

のどちらかです。 

参考資料:リネン類の消毒について

https://www.mhlw.go.jp/content/000625023.pdf

患者の治療をする前後やグローブを装着する前や離脱した直後、素手でどこかに触れた後、抜かりなく手指衛生を20秒間行うべきである

石けんと流水または60%アルコール含有の手指衛生剤を用いる

タイミングと方法を気をつけましょう。 

PPEの装着の仕方

(従来の方法と変わりないため省略)

PPEの離脱の仕方

(従来の方法と変わりないため省略)

消毒

患者の体液や汚染された環境表面・器具、危険な薬品(消毒薬など)に曝露する可能性のあるすべての業務において適切なPPEを装着するべきである

汚染された器具を使用する間は丈夫なグローブやマスク、アイプロテクション、ガウンを装着するべきである

これはその通りです。

患者の予約は、処置室の完璧な消毒が行うことができるようにスケジューリングされるべきである

これまでこのような対応をなさってきたかと思います。

もし可能であれば、一人の歯科衛生士に対して2つの処置室を準備し、次の患者を処置している間にもう一つの処置室を消毒・治療の準備を行う

これはかなり恵まれた環境ですね…

あまり気にしなくていいと思います。

もし処置室が一つの場合、アポイントメントの時間を伸ばすことを推奨する

例えば適切な部屋の消毒と準備に1.5時間のアポイントをとる

ダブルブッキングはしてはいけない

ダブルブッキングは言うまでもないことですが、治療の密度を下げるか時間を伸ばすか…

悩ましいところです。

もし診療室にドアがない場合、部屋にプラスチックバリアを使用することを考慮する

このバリアは患者ごとに消毒する必要がある

診療室以外との間仕切りを要求しています。

オープンスタイルの診療所は個室化を考えた方がいいかもしれません。

と言うのも、政府の言う「コロナの時代の新たな日常」や専門家会議の言う「新たな生活様式」「業種ごとの感染対策」には個室化を求める文言が入っても不思議ではありません。

バリアは、可能な場合は特に、清掃が難しい環境表面(ライトのスイッチ、コンピュータ、マウス、ユニットなど)に使用し、患者ごとに交換する

ここで言うバリアは、保護テープなどのバリア材のことです。

グローブのまま触れる部分には適宜使用しましょう。

診療室の清掃と消毒にはEPAが認証した病院向けの消毒薬のリストN***** に掲載されており、SARS-CoV-2に有効とされているものを使用する

***** https://www.epa.gov/pesticide-registration/list-n-disinfectants-use-against-sars-cov-2

清掃や消毒に使う製品は製造元の指示にしたがって使用すること(濃度、使用方法、作用時間)

ドアノブやカウンター、椅子、キャビネットなどの環境表面も拭く必要がある

環境表面の消毒に適している消毒薬は次亜塩素酸ナトリウムです。

ちなみに日本歯科衛生士会アルコールの使用を推奨しています。

www.jdha.or.jp

確かにSARS-CoV-2には有効ですが、HBVには効果が少ないため私は次亜塩素酸ナトリウムを推奨しています。

超音波洗浄機を使う場合は、蓋をきちんと閉めて洗浄エリアにエアロゾルが飛散しないようにする

洗浄室の清潔域と不潔域を明確にする

すべてのクリティカル製品や耐熱性のある治療器具は使用前に高圧蒸気滅菌がなされるべきである

化学インジケーターや生物インジケーターを使用して滅菌保証を行う

治療の準備が整うまで、滅菌のパックは開けない

従来通りです。

歯科衛生士の処置で特に考慮すること

すべての処置前に1分間のマウスリンスを行わせるほうが良い

薬剤は1%過酸化水素水、または0.2〜1%のポピドンヨード、0.05〜0.1%の塩化セチルピリジウム(のど飴に含有されている)が推奨されている

イタリアの報告を根拠としています。

Izzetti, R. Nisi, M, Gabriele, M, Graziani, F. COVID-19 transmission in dental practice: Brief review of preventive measures in Italy. J Dent Res 2020 doi:10.1177/0022034520920580

COVID-19の伝播はエアロゾルが発生する処置によって生じる飛沫によって起こるため、可能な限りエアロゾルの発生を回避する

シーラントや修復処置を行う時にはラバーダムを用いる

排唾管のバックフローが生じるため、可能であれば4ハンドテクニックとバキュームを用いてエアロゾルとしぶきの発生を制御する

CDCの暫定ガイドラインに沿った内容です。

歯周治療には超音波スケーラーを用いるか、手用スケーラーを併用するか

すべての歯面のポリッシングをするか、プラークと着色の除去を選択的に行うか

エアロゾルの発生がない、あるいは少ない方法を採用できる時は採用するように求めています。

エアーポリッシングは避ける

3wayシリンジの水と空気を同時に使わない

いずれもエアロゾルの発生を少なくすることを目的に推奨しています。

以下の質問票を用いて治療後48時間後にCOVID-19のスクリーニングを行う

表を添付します。ご活用ください。 

pdfファイルとして御所望の方は、facebookメッセンジャーからお知らせください。

COVID-19スクリーニング用質問票

簡単な質問項目で、汎用性の高いものとなっています。

治療後のフォローアップも求めています。これはCDCの暫定ガイドラインに準拠した内容となっています。

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注意事項

全てNoだったからと言って感染のリスクがゼロになるわけではありません。

スクリーニングによりリスクを減らすことはできますが、ゼロにはなりません。

歯科衛生士向け 職場復帰前のチェックリスト

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注意事項

COVID-19の検査(陰性証明)は日本では不要です。

また非接触体温計は、暑い時期だと特に不正確ですので自宅で検温してもらうようアナウンスした方が良いと思います。

 

まとめ

全体を通して参考になる部分と、そうでない部分、参考にしてはいけない部分がありました。

参考になる部分

  • スクリーニングの質問票
  • スタッフ間でのソーシャルディスタンスの確保

あたりでしょうか。

他の項目は従来通りであるものが多く、今一度確認する目的であれば有用であると思います。

参考にならない部分

  • 治療エリアでない場所でもアイプロテクションを装着する
  • ペンは患者ごとに分ける

ちょっと「やりすぎ」な感じが否めません。

あまり感心しない部分

低リスクな処置でN95マスクを消費することは、まだ供給が安定していない状況においては正当化されません。(米国内で供給が安定しているなら話は別ですが)

注意が必要な部分

  • 発熱がある人の診療は断る

これは米国内のDH単独のクリニックに限定されるものです。

日本でこのまま適応はせず、歯科的問題による発熱でないかスクリーニングを行う必要があります。

断られた患者さんが救急部門を受診し最前線に負担をかけるようではいけません。

歯科医療従事者として社会的な責任を全うしたいものです。

(追記)

Mie Choeさんのご指摘を元に、米国内で誤りであるわけではないことが分かりました。

「誤りである」としておりましたが、「(米国内では誤りではないが)日本国内で適応してはならない」と修正いたしました。ありがとうございました。

疑問点

  • 換気に関する言及がない

重要ですからお気をつけください。

 

何か誤り等ございましたら、コメント欄からお寄せいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。