歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

コクラン 歯科治療の再開に関する勧告:rapid review

この資料のリンク

oralhealth.cochrane.org

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5月7日(イギリス時間)にCochrane Oral Healthから「歯科治療の再開に関する勧告:rapid review(以下、本レビュー) 」が発表されました。

11か国のCOVID-19と歯科治療の再開に関係するガイドライン等を、急ぎ取りまとめたものです。

 

目次

 

この資料を3行でまとめると

  • 各国の歯科診療再開に関する既存のガイドラインを参考にし、今後政策決定者等が歯科診療再開に関するガイドラインを作成するための参考資料として本レビューを発表した
  • 各国のガイドラインによると、「歯科診療再開」は、「COVID-19蔓延前の診療水準での再開」を意味しておらず、抑制的な歯科診療を推奨している
  • 各国のガイドラインの歯科診療とCOVID-19に関する項目は、根拠のないものが多かった

 

背景

各国で商業活動の再開が計画される中、歯科診療再開のためのガイドライン等を策定する必要に(イギリスが?)迫られたのでしょう。

このレビューに名を連ねているのはNHS(National Health Service:国民健康保健)やスコットランド臨床評価プログラム、アバディーン大学(スコットランド)、ダンディー大学(スコットランド)、マンチェスター大学イングランド)など、イギリスの機関ばかりです。

政治的な思惑が感じられないわけではないですが、むしろSARS-CoV-2との戦いは政治マターですから、イギリスとしてはそんなこと言ってられない、といったところでしょうか。

元々コクランはイギリス発祥ですから、まあこういう使われ方もするのでしょうか。よく知りませんが。

とりあえず見てみましょう。

 

本レビューの目的

COVID-19のパンデミックにより、世界中で歯科診療所の閉鎖や歯科サービスの縮小が行われている

現在、いくつかの国では、ロックダウン戦略からの脱却の一環として、歯科医療サービスの再開または再開の計画をしている

昨日お伝えしたADHAの暫定ガイダンスもその動きを反映したものです。 

masaomikono.hatenablog.com

 

今回、緊急のガイダンスが必要になった状況に対応するため、政策決定者や意思決定者がそれぞれの国の状況に応じた包括的な国家レベルのガイダンスを作成することを支援するために本レビューを実施した

個々の歯科医院や歯科医師に向けたものではなく、各国の保健衛生行政部門や歯科医師会や学会等に対して、現在各国で出されているガイドライン等をまとめたから今後の参考にしてね、という意図だそうです。(とは言え、知っていて損はない情報は多いです。)

このレビューでは、最近作成された各国のガイドライン等から主要な項目を要約し、それらの提言がどの程度の証拠によって裏付けられているかを評価した

いくつかの項目に限定してまとめているようです。

このような状況下では、本レビューで参考にした各国が提供しているガイドライン等の情報は変更される可能性がある 

本レビューを出した後、それぞれのガイドラインが変更されれば整合性が取れなくなる可能性を示唆しています。

キーメッセージ

本レビューでは、11カ国、12種類の歯科治療の再開に向けた各国の提言をまとめている

11か国とはフランス、スペイン、ポルトガル、スイス、ベルギー、ノルウェーデンマーク、マルタ、アメリカ(CDCとADA)、カナダ、オーストラリアです。

各国のガイドライン間では、内容や詳しさ(レベル)が大きく異なる

対応の根拠の乏しさを反映しているようです。

ほとんどのガイドラインでは、電話による患者のトリアージを推奨しているが、一部の情報源では受付での検温によるスクリーニングを推奨している

これについては受診前の電話が良いと思います。

歯科医院に滞在する時間を短くできますし、非接触型体温計は精度に難があり、特に夏場は数値が高く出がちです。

ほとんどのガイドラインでは、可能であれば、エアロゾルが発生する処置を避けることを推奨している

N95マスクは、エアロゾルが発生する処置であるかどうかに関わらず、またCOVID-19患者であるかどうかに関わらず、大多数のガイドラインによって推奨されている

一部のガイドラインでは、エアロゾルが発生する処置に対してN99マスクの使用を推奨している

空気感染については否定的な論調が主ですが、エアロゾルに対する対応はひとまずN95に落ち着いてしまうんでしょうか・・・?

ガイドライン等には、感染リスクを低減する方法(例:術前の洗口剤の使用、バキュームの使用、ラバーダム、およびPPE)に関する推奨事項が含まれている

これはCOVID-19以前から変わりない内容です。

大部分のガイドラインでは、参考文献や根拠となる証拠がない

ガイドラインの中のいくつかの項目では、強力なエビデンスが得られる可能性は低い(または全くない)

それはそうなんですけどね。まだ出てきて間もないウイルスですから、その感染経路についてはっきり分かっていることの方が少ないです。

今後、様々な情報によって各国のガイドラインも変更されることが予想される記述です。 

すべてのガイドラインは、スタッフや患者、公衆衛生へ与えるリスクを最小限に抑えつつも、質の高い歯科治療を提供をサポートする活動(政策)に焦点を当てる必要性を強調している

いつまでも休診にはしておけませんから、各国のガイドライン策定は喫緊の課題なのでしょう。

PPEの適切な使用(着脱を含む)とエアロゾルが発生する処置、エアロゾルの発生を減らす試みとの間の相互関係を検討する必要がある

これはPPEの種類(特にマスク)はどうしたらいいのか研究が必要である、との示唆と思われます。確かにこの結果は今後の歯科医療を大きく変えてしまうかもしれません。

患者のスケジューリング(アポイントメント)や診療所の運営(診療の流れ)への影響を含め、(COVID-19に対する)効果的な洗浄・消毒プロセスについて明確にする必要がある

環境表面の消毒や換気に時間をかけなければならなくなるため、そのスケジューリングをするように求めているガイドラインが多いようです。

本レビュー作成までの背景

WHOは、2020年1月30日にCOVID-19を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態とし、2020年3月11日には世界的パンデミックであると宣言した

COVID-19は、主に飛沫や媒介物(手や環境表面)を介して感染する

歯科医療従事者は、ハンドピースや超音波スケーラー、空気・水シリンジ、口腔内X線撮影、感染した患者の咳など、歯科処置における患者との密接な治療環境とエアロゾルによって生じうるウイルスの拡散により感染リスクの高い場所に置かれている

NYタイムスなどでは歯科医療従事者が最もハイリスクだとする不思議な報道がありましたが、「最も」かはともかく、一般的な職業と比べてハイリスクであることは間違いありません。

パンデミック期間における歯科治療の提供は、一般的に段階的なプロセスで行われた

最初にルーチンの治療を中止し、次に急を要する歯科治療の対応、その後に救急処置のみを提供することになっていった

これまでの各国の動きについて振り返っています。

多くの国では、急速に救急処置の提供へと移行した

例えば、2020年3月16日、ADAは歯科医師に対してすべての待機的(延期可能な)歯科治療を3週間延期することを提案した

ニュージーランドでは同日、必須ではない歯科治療と待機的歯科治療がすべて中止された

日本も同様の”要請?”はなされましたね。

2020年4月末までに、多くの国や地方自治体、専門機関は、歯科医療の再開・再構築に関する勧告やガイダンスを発表している

日本でも5月4日の総理会見での「コロナの時代の新たな日常」や専門家会議の「新しい生活様式」という発表で分かるとおり、今後SARS-CoV-2との共存が図られる方針となりました。

今後、様々な業種ごとの感染対策のガイドラインが策定されるようですが、歯科領域ではどうなるでしょうか。政府が出すまでもないでしょ、と出ないかもしれません。

出たとしても「個々で頑張って」止まり・・・?

本レビュー発表までのプロセス

2020年5月2日から6日までの間に、我々は歯科医療の再開に必要な要件に関する、国際機関や専門機関から出たものを含む最近のガイドラインについてレビューを行った 

私たちは、WHO と関連するガイダンス文書を特定するために灰色文献検索を行い、2020年5月1日に歯科ガイドラインのコクラン検索を最終更新した

Cochrane Oral Health (COH)の情報科学者と連絡を取った

(検索戦略はリクエストに応じて入手可能)

灰色文献とは、価値があるのに情報の海に溺れた文献や、市販されておらず手に入らない文献のことを指します。おそらく英語以外の言語のガイドラインのことだと思います。

確かにフランスのガイドラインなどはフランス語版しかなくよく分からなかったので、今回レビューをしてくれて助かりました。

歯科医療機関や保健省のウェブサイトを検索した

また、Global Evidence Ecosystem for Oral Health(GEEOH)を通じて、研究者や意思決定者の国際的ネットワークにもコンタクトを取った。

GEEOHは、重複する作業を減らし、エビデンスから政策や臨床実践への直接的なルートを作るために設立され、現在はCOHによって調整されている。

COH、Scottish Dental Clinical Effectiveness Programme (SDCEP)、および当研究グループの関係は、複数の歯科最高責任者や世界的な歯科政策のリーダーたちとの迅速なコミュニケーションと彼らからの支援をもたらした。

やはり政策提言のためのレビューであることが分かります。

検索には言語の制限はなく、研究グループのメンバーは英語以外の言語で出版された文書を翻訳することができました

検索により選ばれた情報源から、歯科医療の再開に向けた最新の関連勧告を提供しているものを選択した

検索対象とした文献は、COVID-19 の発生により歯科医院が閉鎖された後、感染拡大を防ぐために歯科医療が制限されている地域等において、歯科医療の再開に明確に対応しているガイダンスや推奨事項が含まれているものとした

国のガイドライン等がある場合は、地域のガイドライン等よりも優先して採用した

歯科医療の再開のためのガイドラインだけが対象となっています。

この迅速レビューは時間的な制約があったため、我々はsingle data extraction(一人のレビュワーによるレビュー:本来は二人double data extractionが望ましい*)を行ったため、文献の質を正式に評価したり、その出典を検証したりはしていない

* https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16765272

Buscemi N. Single data extraction generated more errors than double data extraction in systematic reviews. J Clin Epidemiol. 2006, 59: 697-703.

正式なレビューとは言い難いと認めています。

またそれぞれのガイドライン等の勧告の元となっているエビデンスの検証はしていません。

したがって本レビューの活用についても個別の国(読者)の判断に委ねるような表現になっています。

本迅速レビューと、裏付けとなるエビデンスとを関連させようとする試みについては記載されている

情報やデータの抽出に先立ち各国のガイドライン等のサンプルのレビューを行い、報告書全体における政策決定に共通する項目を選定した

これらの項目を用いて分析を行い、調査結果(本レビュー)を発表した

調査結果

2020年3月18日から5月5日までの間に作成された11カ国のガイドライン等のうち、合計12文書を特定した

国のリストと文書の詳細は付録 1 に示した

冒頭で示した国です。

我々は、ガイドライン等に含まれる5つの項目における共通のテーマと関連する勧告をまとめた

選定した5つの項目は以下の通りである

  1. 治療の準備と患者への配慮について
  2. 歯科医院スタッフのためのPPEについて
  3. 診療室の管理について
  4. 歯科治療について
  5. 術後の清掃/消毒/廃棄物管理について

逆にいうとこれ以外の項目についてはレビューされていません(対象外)。

各国のガイドライン間では、内容や詳しさ(レベル)が大きく異なる

とある項目に特定のガイドライン等からの勧告がない場合、その項目の重要性が低いことを意味するものではないことを強調することが重要である

各国のガイドライン等において採用率の低い項目があるが、それは重要でないことを意味するわけではない、としています。(ちなみに採用率は%で示しています)

COVID-19 の懸念事項に対処した勧告の大部分については、参照文献や根拠となる証拠は何もなかった

COVID-19についてはまだほとんど分かっていません。このこと自体は仕方のないことです。

今後も情報収集を継続する必要があることが分かります。

1. 実践準備と患者への配慮に関する推奨事項のまとめ

再開前の作業

レジオネラ菌などの汚染リスクを減らす方法、スタッフのトレーニング、機械や設備のメンテナンス(ITなど)などの一般的なタスクを含む:4/12(33%)

4/12=12種類のガイドラインのうち、4つのガイドライン等で採用・推奨されていた、という意味です。

繰り返しますが、この数字が小さいからと言って重要でないという意味ではないことにお気をつけください。

レジオネラ菌などの汚染リスク、とは給水系の汚染のことです。長期休暇後のフラッシングや給水系の整備はこれまで通りの方法で結構です。

サプライチェーン

PPEを含む物資の入手可能性を確認すること:2/12(17%)

目下の関心事項でしょうから、あえて申し上げることはありません。

スタッフのアドバイスとスクリーニング

スタッフにCOVID-19の症状がないことを確認することを含め、改訂されたプロトコルの中で様々なアドバイスやトレーニングを行う:5/12(41%)

昨日ご案内したADHAの質問票のようなもののことでしょう。

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毎日の検温を行う:2/12(17%)

患者のトリアージ

主に電話による患者スクリーニングを行う:11/12(92%)

COVID-19のリスク評価についての情報が記載されているものがある

また、受付での検温スクリーニングを推奨するものもある

電話でスクリーニング、リスク評価まで出来る体制が感染対策上は最も安全です。

運用できるかどうかは個々の歯科医院でご判断ください。

主治医が手術に先立ち患者の COVID-19 状態を確認すべきである:1/12(8%)

患者へのアドバイス

治療を受ける患者へ各種アドバイスを行う(例:ソーシャルディスタンス、マスクの着用、手指衛生):5/12 (42%)

患者のスケジューリング

トリアージに基づいた患者の明確なスケジューリング(アポイントメント)を計画する:4/12(33%)

患者の持つリスクに応じたスケジューリングをするように求めています。

【例:病弱な患者やスペシャルニーズへの配慮】

患者の予約は、こうしたリスクの高い患者との接触を避けるようにすべきである:2/12(17%)

待合室での患者間の交差感染を避けるために、20分から30分程度の時間をかけて消毒する:1/12(8%)

このように診療の順番等も、歯科医院側が感染リスク等を評価した上で決めるように求めるガイドラインもあるようです。

待合室や受付

ソーシャルディスタンスの確保や家具の配置換え、患者への情報提供ポスターの掲示、マスク着用の推奨、手指消毒の推奨、雑誌やおもちゃ・その他の不必要なものを撤去する:9/12(75%)

3つの密を避けること、接触感染を防ぐことを要求しているガイドラインが多いようです。

これは妥当な推奨です。

トイレ

患者に許可を得てからトイレを使用するよう助言する:1/12 (8%) 

「トイレ行っていいですか?」と受付に伝えてもらい、患者が出た直後に掃除に入るように扉の前でスタンバイ…(うーん。)

なるべく受診前に済ましてから来院してもらいましょうか。。。(言いにくい)

治療後にCOVID-19陽性が発覚した場合

接触の追跡と濃厚接触者(治療を提供したスタッフ)の隔離を行う:1/12(8%)

日本では原則、適切なPPEを装着していれば濃厚接触者には認定されません。

とにかく保健所の指示に従うの一択です。

補償・保険

臨床医は患者からの同意を得ることに関して、所属する保険会社(またはそれに相当する会社)と話し合うべきである:1/12(8%)

これは日本ではあまり関係なさそうです。

2. 歯科医院職員のためのPPEの推奨事項のまとめ

すべてのスタッフ

全スタッフが常にフェイスマスクを装着すべきである:8/12(67%)

全スタッフが常にアイプロテクションを装着すべきである:4/12(33%)

診療着を現場で洗濯するか、ランドリーサービスで洗濯する:4/12(33%)

常にアイプロテクションを装着、が治療エリアで、ということなら分かりますが、治療エリア外であれば不要な時もあります。

診療着の処理は統一なさったほうが良いかもしれません。

COVID-19の疑いのない患者の治療をする場合

アイプロテクション(眼鏡/ゴーグル、フェイスシールド)と使い捨てグローブを使用する:12/12 (100%)

N95マスクまたはそれに相当するものの着用する:6/12(50%)

サージカルハットまたはそれに相当するものの着用する:4/12(33%)

COVID-19の疑いのない患者にエアロゾルが発生する処置を行う場合

使い捨てのガウンの着用する:9/12(75%)

N95マスクまたはそれに相当するもの着用する(患者ごとに交換):8/12 (67%) 

サージカルハットまたはそれに相当するものを着用する:6/12(50%)

COVID- 19患者を治療する場合

アイプロテクション(眼鏡/ゴーグル、フェイスシールド)、手袋と使い捨ての手術用ガウンの単回使用:12/12 (100%) 

手袋の二重使用:2/12 (17%) 

N95マスクまたは同等のものを着用する:9/12 (75%) 

サージカルハットまたはそれに相当するものを着用する:8/12(67%)

COVID-19患者に対してエアロゾルが発生する処置を行う場合

N95マスクまたは同等品を着用する(患者ごとに交換):10/12(83%)

N99マスクまたは同等品を着用する:3/12(25%)

いずれにしてもアイプロテクションは必須です。

N95マスクが必要、とする傾向にあることが分かります。根拠はありませんが。

3. 臨床病室管理のための推奨事項のまとめ

スピットンの使用

スピットンは使用すべきではない:2/12(17%)

バキュームに装着するスピットンのようなものを推奨する意見です。

作業面をクリアにし、器具を最小限に抑え、交差感染を最小限にする

処置室の環境表面を清潔に保つ方法について情報提供している:6/12(50%)

例:事務作業を制限する、装飾品を撤去する

治療器具は汚染を避けるために必要なものだけ用意する

必要とされるすべての機器/材料は、事前に準備しておく

汚染が広がらないような事前の準備の重要性を説いています。

無影灯、ハンドル、キーボードなどの接触部分をバリア材(プラスチックフィルムやアルミホイルなど)で覆うべきである:2/12 (17%)

 バリア材は適宜使用していると思います。これまで通りです。

治療のアシスタント以外のスタッフが清潔な器具や必要な材料を持ち込むべきである:1/12(8%)

待合室から治療室まで

可能であれば、特にエアロゾルが発生する処置を行った場合、次の患者は診療室を切り替える:1/12(8%)

診療室にゆとりがある歯科医院では対応可能でしょうが、なかなか現実的ではなさそうです。

COVID-19に関する情報を診療所の入り口に掲示すべきである:1/12(8%)

歯科スタッフに患者との握手や接触を禁じている:1/12(8%)

欧米のガイドラインを参考にしているので、握手の文化についての言及があります。

スタッフの治療エリアへの進入を最小限に抑える:2/12(17%)

スタッフは治療エリアに入る前にすべてのPPEを着用しておくべきである:4/12(33%)

個室化されている歯科医院ではゾーニングがしやすいと思います。

COVID-19の患者が疑われる/確認されている

COVID-19 の疑いがある、または確認された患者は直接治療室に誘導されるべきであり、待合室で待つことを許可されるべきではない:1/12(8%)

COVID-19患者の治療は陰圧室で行われるべきである:1/12(8%)

今の日本では一般の歯科医院にCOVID-19患者あるいは疑われる患者の治療を行う状況は考えにくいですね。

自宅訪問

すべての患者にCOVID-19の症状とソーシャルディスタンスについて確認し、適切な交差感染対策行うべきである:1/12(8%)

これには、患者の自宅での環境表面の清掃や、歯科医が移動する車内の環境表面の清掃が含まれる

訪問診療特有のリスクへの対応が必要であるとしています。

空気の質

換気/空調の重要性を認めている:4/12(33%)

そのうちの 2/12 (17%)は、各患者間の換気には少なくとも 15 分間必要であるとしている

患者間に15分間隔を開ける、これはなかなか厳しい要求です。

外気モードでのみ空調を使用する(再循環モードでは決して使用しない):1/12(8%)

吸引システムに HEPA フィルタ (レベル 13 以上) を使用すべきである:1/12(8%)

特に換気ができない閉鎖環境ではこれらの条件が望ましいと指摘しています。

ウイルスの拡散を防ぐために診療室のドアを閉めたままにしておく必要がある:2/12(17%)

2つのうち1つはエアロゾルが発生する処置後120分間、診療室を閉鎖する

もう1つでは、これに加えて閉鎖する間、診療室内のすべての引き出しやキャビネットも閉じたままにしておくべきであるとしている

個室であることが前提の書き方になっていますね。

患者の衛生状態

診療所における患者の一般的な衛生に関する情報を提供している:2/12(17%)

例:患者は到着時に手を消毒すること、適切な保護具(プラスチック製のビブス、アイプロテクションなど)を支給されること、治療終了時に手指の衛生管理を行い、できるだけ早く退室すること

患者さんの協力は得られやすい状況にあると思います。

治療後

診療室を出てからバイザー、アイプロテクション、マスクを外すべきである:1/12(8%)

これを行うためには、PPEを着脱するためのスペースが必要です。

ガウンやエプロンを密閉されたビニール袋に入れて廃棄する:1/12(8%)

ゴミ箱を開け閉めで汚染物が飛散することを想定しています。

歯科治療内容について

エアロゾルが発生する処置の削減

エアロゾルが発生する処置の件数や時間を減らす、または避けること:12/12(100%)

3wayシリンジの使用を避けること:1/12(8%)

診療再開=エアロゾルが発生する処置の再開を意味しているガイドラインはないようです。

以前のような水準の治療が提供できるようになったわけではないとしています。

リスク低減のための介入

感染リスクを低減する方法を推奨:11/12(92%)

ラバーダムとバキュームを使用する:10/12(83%)

術前洗口剤を使用する:9/12(75%)

バキュームの使用

エアロゾルの曝露量を減少させるためにバキュームを使用する:11/12(92%)

バキュームの先端を使い捨てのカバーで覆うべきである:1/12(8%)

推奨される処置リスト

低侵襲的な処置を行う:6/12(50%)

実施可能な処置のリストが含まれている:5/12(42%)

診療再開=COVID-19前の治療水準での再開ではない、とするガイドラインが半数であるとしています。

患者の状態に合わせたアドバイス

COVID-19患者、疑われる患者、無症候性患者、隔離患者など、異なる患者群に対して具体的なアドバイスを提供している:5/12(42%)

現在の日本では主に無症候性患者の部分は参考になると思います。

もちろんその他の部分も今後の展開によっては必要になるかもしれません。

5. 術後の清掃・消毒・廃棄物管理に関する推奨事項のまとめ

洗浄・消毒について

患者が接触するたびに、すべての環境表面の清掃と消毒を行う:9/12(75%)

診療室においては「患者が接触するたびに」を「治療が終わるたびに」と読み替えて差し支えありません。

ドアの取っ手、椅子、表面を含むすべての非臨床エリア(受付、待合室、トイレ)の清掃と消毒を行う:4/12(33%)

1日2~3回の診療室の床の清掃を行う:2/12(17%)

消毒を行う場合のPPE

清掃・消毒を行う際には、アイプロテクション、グローブ、およびマスクを着用すべきである:4/12(33%)

これはこれまで通りです。

可能な限り最高温度(少なくとも 60 度で 30 分間、または 80~90 度で 10 分間の熱接触)で衣服を洗濯すること:1/12(8%)

医療廃棄物の処理

医療廃棄物は地域のシステムの規則に従って処分すること:4/12(33%)

PPE やその他の使い捨ての汚染物質はビニール袋に入れて、ペダル式の硬い容器に入れること:1/12(8 %)

廃棄物を通して廃棄物処理業者の方が感染した場合、院内感染と認定されますし、また他の医療機関へ感染が伝播する可能性もあります。適切な処理が望まれます。

消毒薬

環境表面、吸引装置、器具の消毒に適したものを使用すること:1/12(8%)

消毒に次亜塩素酸/塩素ベースの溶液を使用すること:4/12(30%)

基本的には次亜塩素酸ナトリウムです。

なお次亜塩素酸水は不安定で使用条件が限られるため、医療機関での消毒、特に環境表面の消毒には不適格です。

部屋の環境表面の日常的な清掃と消毒を行う (例:消毒剤を塗布する前にクリーナーや水で表面を洗浄するなど):1/12(8%)

汚染物質の除去と消毒は別です。明らかに目で見て汚れている場合は清掃ののちに消毒、定期的な環境整備では汚れに関係なく清掃ののちに消毒を行います。

消毒にアルコール(60~70%エタノール)を使用する:2/12(17%)

消毒にクロロキシレノール(0.12-0.24%)を使用する:1/12(8%)

消毒に Virkon®**、Perasafe®*** を使用する:1/12(8%)

**ペルオキシ一硫酸カリウム製剤、***グルタルアルデヒド製剤

別に特別なものを使用する必要はありません。次亜塩素酸ナトリウムで結構です。

清掃・消毒に関する国のガイドラインを参照している:3/12(25%)

手洗い

PPE の離脱後に手指衛生を行う:3/12(25%)

アルコール(60~95%)をベースにしたハンドラブまたは石けんと流水で少なくとも20 秒間の手洗いを行う:1/12(8%)

これまで通りです。

結論

本レビューでは、これまでに公表された各国ガイドライン等の要約を提供した

各国ガイドライン等の主要な要素を要約することで、政策決定者や意思決定者がそれぞれの状況に応じた包括的な国内ガイダンス作成を支援することを目的としている

歯科医院や歯科医療従事者向けではない、としていますが、全体の傾向(今後の流れ)を予想するためには参考になるものだと思います。

ガイドラインのCOVID-19に関する懸念事項を扱った部分では、参照文献や根拠となる証拠は見当たらなかった

これは残念なことですが、仕方ありません。

それよりも、この文章が意味するところ、今後もこうしたガイドラインが度々変更される可能性がある、ということを押さえておく必要があります。

 

まとめ

いわゆる”コクランレビュー”とは異なる rapid review です。よって今後、新たな情報により度々変更されることになる可能性があります。

本レビューを参考にして日本のガイドラインが策定されるのかどうかは分かりませんが、今後の傾向を予想する資料としては有益なものであると思います。

特に「診療再開」が「エアロゾルが発生する処置の再開」や「COVID-19前に行っていたような環境での治療の再開」を意味しているガイドラインは存在しないことは、今後を予想する上で重要な示唆を与えてくれそうです。