前回のブログではエアロゾルの定義について解説いたしました。
ではどのような状況で、特に歯科領域ではどのような処置でバイオエアロゾルは発生するのでしょうか。
シリーズ一覧
第1回 エアロゾルとは何か?
第2回 バイオエアロゾルが発生する状況(歯科領域)(←いまここ)
第3回 バイオエアロゾルはどれくらいの時間、空中に浮遊するのか?
第4回 バイオエアロゾルはどれくらい広がるのか
第5回 (続く)
バイオエアロゾルの発生量について
バイオエアロゾルを発生させる歯科治療器具は数多くありますが、発生量が多い順に並べると以下のようになります23)24)25)26)27)28)。
- 超音波スケーラー
- タービンハンドピース
- エアーポリッシャー(エアーブラシ)
- 3wayシリンジ
- コントラアングルハンドピース
器具や治療内容との関係
- 超音波スケーラーは、一般歯科治療時の3倍のバイオエアロゾルを発生していた25)。
- スケーラーの種類(超音波スケーラー、音波スケーラー、エアースケーラー)による明確な違いは認められなかった24)
- 歯内療法のほうが修復処置よりも細菌による汚染が多かった29)
- 処置の時間が長くなるほど細菌による汚染が多かった29)
- 高速回転器具や超音波スケーラーを使用しない歯周治療や矯正治療では、細菌による汚染はそれほど強くなかった30)
- 高速回転機器を使用した部屋と使用しなかった部屋の細菌汚染レベルの差は統計学的に有意であった30)
超音波スケーラーが最も大きな要因であることがわかります。
処置時間に比例することは容易に想像できます。
ハンドピースを用いない治療のバイオエアロゾルの曝露リスク(感染リスクではない!)は低そうです。
曝露リスクと感染リスクについてはこちらをご参照ください
その他
- バイオエアロゾルから細菌が培養されることは他にもいくつかの研究で示されています31)32)33)。
- 歯科医院の空気中から培養される細菌のおよそ半分は、少なくとも1種類以上の一般的な抗菌薬に対する耐性を有していたとする報告もあります34)。
注意事項
今回紹介した文献の結果はバイオエアロゾルを収集した後の培養検査によって得られたCFU(colony forming unit)によるものがほとんどです。
実際のバイオエアロゾルを定量化したものとは言えないこと、また培養できない微生物が存在することには注意する必要があります。
次回はどれくらいバイオエアロゾルが空中に浮遊するのか、についてご紹介いたします。
参考文献
- Leggat P A. Int Dent J, 2001; 51: 39-44.
- Bennett AM. BDJ, 2000; 189: 664-667.
- Harrel SK. JADA, 1998; 129: 1241-1249.
- Bentley CD. JADA, 1994; 125: 579-584.
- Legnani P. Quintessence Int, 1994; 25: 435-439.
- Gross KB. J Dent Hyg, 1992; 66: 314-318.
- Monterio P. M. Rev port estomatol med dent cir maxilofac, 2013; 54: 2-7.
- Rautemaa R. J Hosp Infect, 2006; 64: 76-81.
- Barnes JB. J Periodontol. 1998; 69: 434-438.
- Harrel SK. Compend Contin Educ Dent, 1996; 17: 1185-1194.
- Muzzin KB. JADA, 1999; 130: 1354-1359.
- Decraene V. J Gen Appl Microbiol, 2008; 54 :195-203.