歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

Ci で販売されている抗体検査について 続報

昨日公開したブログには多くの反響をいただきました。感謝申し上げます。


そこでも言及した、厚生労働省が実施していた抗体検査の結果が本日公表されましたので、こちらでも共有したいと思います。

 

厚生労働省の抗体検査

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000640184.pdf

(画像クリックで厚生労働省のリンク先にとびます)

 

東京都・大阪府・宮城県の3都府県において、無作為抽出をした*一般住民が対象と説明されています。

(* 無作為でない可能性があります。後ほど解説します。)

 

これによると、東京都の陽性率は0.10%、大阪府の陽性率は0.17%、宮城県の陽性率は0.03%であったとのことです。

PCR検査による確定例はそれぞれ0.038%0.02%0.004%ですから、それと比べると市中には数倍の感染者が存在することが推測されます。

それ自体は予想されていたことですから、別に驚くことではありません。

 

昨日のブログで紹介したソフトバンクグループの抗体検査の結果では、一般集団(を模したソフトバンクグループ社員)の陽性率は0.23%、医療従事者を含めた全体では0.43%でした。

 

参考値として提示されているモコバイオ(大阪市大が開発)の結果は1.07~1.25%です。

 

これまでの報告と総合して考えると、抗体保有率は高く見積もっても1%前後であることが予想されます。

 

注目ポイント

私が注目したポイントは以下の部分です。

 

f:id:masaomikono:20200616180108p:plain

 

⑴ 本事業は国全体として過去に新型コロナウイルスに感染した人の割合を推定するものであり、個別に現在の感染を診断するための調査ではありません。

疫学調査のために行ったものであり、個人レベルの話ではないと説明しています。

 

現時点でこれらの抗体の性質(体内での持続時間や、2回目の感染から守る機能があるかどうか)は確定していません

陽性であっても安心できない、誰もが感染対策を怠ることはできない、としています。

 

疫学調査としてのみ価値があり、個人レベルではほとんど意味がないことがよく分かると思います。

 

どうした大阪!?

大阪府は対象者の選別が無作為ではありませんでした。

抗体検査の対象者を希望する人にしてしまったのです。

資料には対象者について、以下のように募集しています。

府内に居住し、大阪府健康サポートアプリ「アスマイル」に登録している20歳以上の方(お試し登録の方は除きます。)に対して抗体検査の希望者を募集します。
なお、検査希望者多数の場合は抽選のうえで受検者を決定します。

その結果、3,000人の募集枠に対して57,000人が応募する事態となってしまいました。

アプリを使用している(使用できる)人、ハイリスクな仕事等に従事していて強く検査を希望する人(あまり意味ないけど)など、選択バイアスが発生してしまっています。

よって、今回の大阪の調査結果については慎重な解釈が必要です。

 

ところで最近の大阪府は大丈夫でしょうか?専門家会議にもちょっと不安を感じます。

(このタイトルは正確さを欠いていますが...)

 

まとめ 

おそらく今後しばらく、抗体検査による疫学検査は行われないでしょう。

感染の拡大がなければ抗体保有率は変わらないので、意味がないからです。

また、最も感染が拡大していると考えられる東京都が対象になっていますから、それより抗体保有率が低いと考えられる他の都道府県で疫学調査を行う必要はないでしょう。

 

ただし、今後第2波・第3波が襲来した後であれば行われる可能性はあります。

第2波・第3波でどれほど感染が広がったのか調べるためであれば行う価値はあるからです。

 

従って、抗体検査は元から個人レベルでは意味がありませんでしたが、(少なくとも次の感染拡大が起こるまでは)研究用試薬としても意味がなくなってしまいました。

 

なぜ Ci が抗体検査キットを販売しているのか、ますます分からなくなってきました。

 

これから

抗体保有率がこれほど低くても医療体制がギリギリだったことを考えると、いわゆる”集団免疫”作戦はほぼ不可能でしょう。

医療崩壊を起こさずに達成するには時間がかかりすぎますし、短時間で達成するには膨大な犠牲者が必要になってしまいます。

(”集団免疫”作戦をとっていたスウェーデンは大丈夫でしょうか?)

今回の抗体検査の結果で、with コロナ時代の戦略は(元からほとんど決まっていたけど)確定した感があります。すなわち「新しい生活様式」です。

今後は、少なくともワクチンが開発されるまで、感染予防に努めた社会行動が求められます。

ただ”やりすぎ”な部分もありますから(例:学校の児童のフェイスシールドなど)、削れるところは削る試行錯誤がどこまでできるか、が重要になるでしょう。

歯科においても同じことが言えると思います。

 

おまけ

ワクチンができても「自閉症ガー」「水銀ガー」「マイクロチップを埋め込まれるー」の反ワクチン派がいますから、一定数は接種しなくて燻り続けるのでしょうね。

少なくとも子どもに各種ワクチンを接種させないのは虐待だ、とする法律くらい作ってもらいたいものです。

 

追記(2020.06.17)

実は昨日Ci に問い合わせをしていたのですが、そのお返事をいただくことができました。

f:id:masaomikono:20200617211314p:plain

私の問い合わせ内容

f:id:masaomikono:20200617211343p:plain

Ci の担当者からいただいた返信

 

ひとまず「研究用」の記載が付与されることになるようです。

今後の販売については検討するとのご回答もいただきました。

素早い対応には感謝申し上げます。

ですが、販売停止を強く希望するものであります。

 

通販サイトを確認

f:id:masaomikono:20200617220940p:plain

通販サイトの表記が変わっています、が...

確かに「研究用」であることが明記されました。

しかし、「過去の感染”も”わかります」とあります。

他に何が分かるんでしょうか?

ぜひ教えてほしいです。

 

追記(2020.06.18)

「過去の感染”も”分かる」とはどう言うことか Ci に尋ねてみました。

「”も”」を「”が”」に変更しますとの返事が来ました。

 

通販サイトを確認

f:id:masaomikono:20200618180521p:plain

 

結局「過去の感染」うんぬんの文章そのものを削除したようです。

ぜひ商品ごと削除してほしいものです。