歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

CDC の迷走 問題の本質は「空気感染するかどうか」ではない

9月18日に米国CDC から、「How COVID-19 Spreads(COVID-19 がどのように広がるか)」という声明が発表されました。

 

それを受けて、様々なメディアが「CDCがコロナの空気感染を認めた」とマヌケな報道をしておりました。

それに対して、私は以下のように反応しました。

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しかし直後の 9月21日、CDCがその声明を取り下げました。

www.cdc.gov

取り下げの理由として、以下のような記載がありました。

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これらの勧告の変更の草案を誤って掲載してしまった、現在更新作業中である、とのことです...

一体どうなっているんでしょうか??

 

現在では 9月18日の声明は見ることができませんが、幸い私は(ブログにしようと)スクショを取っていました。

ご入用の方は facebook のメッセンジャー、または masaomikono*gmail.com(*を@にして)から連絡してください。

 

一体何が書いてあったのか、忘備録を兼ねて記載しておこうと思います。

 

9月18日に発表された CDC の声明

全部を記載すると長くなるので、9月21日の声明にない部分を中心に記載します。

 

感染経路

COVID-19 は主として感染者が咳やくしゃみをしたり、歌ったり、話したり、呼吸をしたりするときに発生するエアロゾル (aerosols) のような、呼吸器からの飛沫 (droplets)小さな粒子 (small particles) を介して広がる。

これらの粒子は鼻や口、気道、肺から吸い込まれ、感染の原因となる。

これがウイルスの主な感染経路と考えられている。

エアロゾル、飛沫、小さな粒子...

この辺りが何を指しているのか示されておりませんが、内容的には特に大きな問題はないように思います。

 

飛沫は表面や物体に着地したり、接触により移動することもある。

ウイルスが付着している表面や物体に触れた後、自分の口や鼻、目に触れることで感染することがある。

接触感染はウイルスの主な拡散方法ではない、と考えられている。

これは正しいですね。

接触感染がないわけではありませんが、相対的に飛沫等による感染が主体と考えられています。

 

飛沫 (droplet) や空気中の粒子 (airborne particles) が空気中に浮遊したままで他の人に吸い込まれたり、フィート以上移動したりする可能性があるという証拠が増えています(例えば聖歌隊の練習、レストラン、フィットネスジムなど)。

一般的に換気の悪い室内環境では、このリスクが高まる。

ここの「空気中に浮遊したまま」「6 フィート以上移動」などの文章が、確かに空気感染を想像させます。(なお、これらの証拠は工学系のエアロゾル研究者によるものです。)

ただ、この文章をよく読めば分かるとおり、3密の環境がハイリスクである、ということが書いてあります。

ようやく CDC も日本に追いついた、と言うことですね。

なお WHO は一足先に声明を出しています。こちらを参照ください。

 

どれくらい感染しやすいのか

COVID-19 を含む空気感染性のウイルス (airborne viruses) は、最も感染力が強く、拡散しやすい種類のウイルスである。

麻疹(はしか)のように感染力が強いウイルスもあれば、そう簡単には広がらないウイルスもある。

COVID-19 の原因となるウイルスは、インフルエンザよりは感染力が強いようであるが、麻疹ほど感染力が強いウイルスではない。

ここの文章も特に違和感はありませんね。

 

麻疹の感染力はとても強く、例えば感染者とすれ違っただけでも感染している想定で対処します。

インカ帝国やアメリカ先住民族も、持ち込まれた麻疹や天然痘によって悲惨な状態になり、滅ぼされたりしました。

参考図書↓

 

昨年も、サモアやトンガ、フィジーで大流行が起こりました。

↑ワクチン反対派に見せてやりたい

 

麻疹は空気感染に分類されますが、COVID-19 が麻疹ほどの感染力を持っていれば、満員電車であっという間に蔓延したことでしょう。

このことからも”麻疹のような空気感染”はしないことは明らかです。

 

自分や他人を守るには

可能な限り、他の人から少なくとも 6フィート離れた場所にいること。

パンデミックはストレスになることがある。身体的距離がとれている間は社会的なつながりを維持し、精神的な健康に気を配ることが重要である。

精神面に言及していることは特徴的です。しかし非常に重要です。 

 

他の人のそばにいるときは、マスクで口と鼻を覆う。

マスクは他の予防策の代わりになるものではない。

マスクは重要であるが、マスクだけに頼らないよう注意をしています。

要するに、マスクをしていれば身体的距離を取らなくてもいいわけではない、と伝えたいのでしょう。

 

石鹸と水でこまめに手を洗いましょう。

石鹸と水が手に入らない場合は、アルコール分が60%以上含まれている手指消毒剤を使用する。

 

病気のときは、家にこもり、他の人と隔離する。

 

空気清浄機を使用して、室内の空気中の細菌を減らす。

これはどうでしょうか?

私の知る限りでは、市販の空気清浄機にはウイルス除去効果はないとされています(ヨーロッパの換気工学のガイドラインから)。

空気清浄機についてはこちらをご参照ください↓

 

また、その説明のためのリンクがありましたが、飛べませんでした。

現在更新中とのことですから、経過を見たいと思います。

 

頻繁に触れる表面を定期的に清掃し、消毒する。

 

まとめ

このように、この CDC の声明を読んで「コロナは空気感染する!」と報道する度胸というか蛮勇には恐れ入った、と言うのが正直な感想です。

内容の解釈に問題があるのは報道機関のほうで、私個人的には別に CDC の声明の内容は悪くないと思いました。

 

問題の本質は「空気感染するかどうか」ではなく...

「新型コロナウイルスは空気感染するのかどうか」の議論ははっきり言って無駄だと思います。

 

と言うのも、こちらのブログに記載した文章ですが、 

飛沫〜飛沫核(エアロゾル)も飛沫感染〜空気感染も、元々くっきり分けられるものではなく、シームレスな概念です。くっきり分けられているのは対策の方です。

 

要するに、議論すべきは

「新型コロナウイルスは空気感染するのかどうか」ではなく、

「新型コロナウイルスの感染様式を何と言えばいいのか?」だと思うのです。

 

私は正直「飛沫感染」でいいと思いますが、どうしてもと言うなら「3密感染」推し、100歩譲って「3C 感染」推しで行きます。

 

今回の CDC とマスコミの混乱を見るにつけ、空気感染だの飛沫感染だのマイクロ飛沫だの言わずに、「3密」と一般国民にも分かりやすく表現した、西浦先生をはじめとした日本の専門家会議は、本当にすごいな、と改めて思います。

CDC もそうしたらいいのに。

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