歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

CDC ”エアロゾル”の記載を削除!

先日、CDC が一度発表した声明を3日後に取り下げるという失態を犯しました。

それをもとにした報道で混乱が生じたことをご記憶の方もいらっしゃることでしょう。

 

ブログにもしておりますので、ご存知でない方は先にこちらをお読みください。 

www.masaomikono.com

 

さて、そのブログでも記載しましたが、取り下げた声明である 9月18日の声明では、以下のような記載がありました。

COVID-19 は主として感染者が咳やくしゃみをしたり、歌ったり、話したり、呼吸をしたりするときに発生するエアロゾル (aerosols) のような、呼吸器からの飛沫 (droplets)小さな粒子 (small particles) を介して広がる。

これらの粒子は鼻や口、気道、肺から吸い込まれ、感染の原因となる。

これがウイルスの主な感染経路と考えられている。

このエアロゾル、飛沫、小さな粒子、が何を指しているのか不明でした。

 

また、さらにこのような記載があり、「CDC が空気感染を認めた」というマヌケな報道へとつながりました。

飛沫 (droplet) や空気中の粒子 (airborne particles) が空気中に浮遊したままで他の人に吸い込まれたり、フィート以上移動したりする可能性があるという証拠が増えています(例えば聖歌隊の練習、レストラン、フィットネスジムなど)。

一般的に換気の悪い室内環境では、このリスクが高まる。

空気中の粒子、これも何なのかよく分かりませんでした。

ただ、それらを注意深く認識しておけば、内容的にはさほど問題のあるものではなかったのも事実です。

 

非専門家、一般市民向けには用語の定義をしっかり!

これまで本ブログでは”エアロゾル”という用語を用いる場合、「いわゆる」という接頭語を付けてきました(漏れはあるかもしれませんが...)

 

また、「エアロゾル」という用語は、日本環境感染学会の用語集には収載されているものの、学問領域によって定義が様々であったり、そもそも定義があやふやなまま論文に記載されていたり、あえてあやふやにしていたり、と問題がありました。

問題点についてはこちらをご参照ください↓

www.masaomikono.com

 

CDC 新たな声明

10月5日付けで CDC から新たな声明が発表されました。

混乱を招いた反省からか、CDC が新たに発表した声明では”エアロゾル”の文字が消えました。(ようやく...)

www.cdc.gov

どのような内容なのか、早速確認してみましょう。

 

COVID-19 spreads very easily from person to person

ウイルスが人から人へ、どのくらい簡単に広がるかは様々である。

COVID-19 の原因となるウイルスは、インフルエンザよりも効率よく広がっているようであるが、人に影響を与えることが知られている最も感染性の高いウイルスの一つである麻疹ほど効率的ではない。

これは以前の声明にもありました。

「麻疹ほどではないがインフルエンザよりも効率よく感染する」 は何を意味するのかというと、麻疹で見られるような空気感染はしないが、インフルエンザよりも広がりやすい、ということです。

 

COVID-19 most commonly spreads during close contact

COVID-19 に罹患している人の近く(6 フィート以内)にいる人、またはその人と直接接触している人は、感染の危険性が最も高い。

COVID-19 に罹患している人が咳やくしゃみをしたり、歌ったり、話したり、呼吸をしたりすると、呼吸器の飛沫(respiratory droplets)が発生する。

これらの飛沫の大きさは、大きな飛沫(目に見えるものもある)から小さな飛沫まで様々である。

小さな飛沫は、気流中で非常に速く乾燥して粒子(particles)を形成することもある。

エアロゾルという表記は無事なくなり、飛沫に統一されました。

その飛沫のサイズに着目した表記になっています。

最後の粒子、はよく分かりません。含みを持たせた表現になっています。

 

感染は主に、COVID-19 に罹患している人と他の人が密接に接触している時、呼吸器の飛沫に曝露されることによって起こる。

感染は、呼吸器の飛沫を吸入したり、鼻や口の中の粘膜などに付着したりすることで起こる。

これは従来通りです。

 

呼吸器の飛沫は COVID-19 に罹患した人から遠ざかるにつれて濃度が低下する。

より大きな飛沫は重力により落下する。

より小さな飛沫粒子は空気中に広がっていく。

時間の経過とともに、呼吸器の飛沫中の感染性ウイルスの量は減少する。

小さな飛沫と粒子が広がること、時間の経過とともに飛沫による感染の危険性が減少することを併記しています。

 

COVID-19 can sometimes be spread by airborne transmission

"airborne transmission" すなわち空気感染に関する記載です。

感染症の中には、空気中に数分から数時間漂う小さな飛沫や粒子に含まれるウイルスによって広がるものもある。

これらのウイルスは、感染した人から 6フィート以上離れた場所にいる人や、その人がその空間を離れた後に感染することがある。

このような広がりは空気感染(airborne transmission)と呼ばれ、結核、麻疹、水痘などの感染症が広まる重要な方法です。

これはその通りであり、従来の定義をおさらいしたものです。

 

特定の条件下(under certain conditions)では、COVID-19 に罹患している人から 6フィート以上離れた場所にいる他の人が(空気*)感染したように見える、という証拠があります。

これらの感染は、換気が不十分な閉鎖された空間で起こりました。

時には、感染者は歌を歌っている時や運動している時など、大きく呼吸をしていることもありました。

 はい、特定の条件下=換気が不十分な閉鎖された空間、です。3密です。

3密の条件下ではまるで空気感染のように感染する、ということです。

そうです、日本の皆さんにとっては何の目新しいものでもありません。

 

科学者たちは、 COVID-19 に罹患している人から発生した感染性のある小さな飛沫と粒子の量が、ウイルスを他の人に広げるのに十分なほど、このような状況下で濃縮されたと考えている。

感染した人は、COVID-19 に罹患した人と同じ時間帯に、同じ空間にいたか、去った直後にそこにいたことが分かっている。

これ、2月の段階で日本の専門家会議のメンバーは気づいていましたよ...

そして遅くとも3月下旬には3密を避けるよう、国民には知らされていました。

 

まとめ

先日のブログにも書きましたが、

「新型コロナウイルスは空気感染するのかどうか」

ではなく、

「新型コロナウイルスの感染様式を何と言えばいいのか?」

を議論するべきだ、と書きました。

 

CDC はそこの言及はしていませんが(私は「3密感染」推し)、はっきりと従来の空気感染とは違う、と区別するに至り、特殊な環境下が危険だ、と発信するようになってくれました。

日本発で、3密感染、をモッタイナイみたいにアピールしたらいいと思います。

 

トランプのアニキ、あなたの選挙運動は密なんですけど...

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朝日新聞デジタルより失敬しました