歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

従業員にコロナ陽性者が出た、シアトル近郊の歯科医院の対応

シアトル近郊の Vashon 島にある、Langland Dental Associates という歯科診療所の従業員が COVID-19 である、と診断され、その後の対応について報道がなされています。

www.vashonbeachcomber.com

 

日本との相違点はあるものの、参考になる事例と思いますので、ブログに残して皆さんと共有したいと思います。

 

報道記事の詳細

感染判明までの経緯

10月1日、Langland Dental Associates の従業員が COVID-19 の検査を受けた。

10月2日、検査陽性が判明した。

当該従業員は最近、旅行をしており、その際に感染したと考えられている。

検査陽性が判明してからすぐに職場から離れ、自己隔離を開始した。

報道時点では、当該従業員には症状はない。

(河野私見、以下同じ)

なぜ検査をしたのか、また何の検査をしたのかは不明です。

おそらく PCR検査、または抗原検査だと思うのですが、、、

無症状患者に対する感度はとても低く、偽陽性では?と思わなくもありません。

 

感染判明直後の対応

当該従業員が診療を行い、密接に接触したと考えられた患者は 4 名。

彼らはその後、自宅隔離を開始している。

早期検査の信頼性が低いという懸念から、報道時点ではまだ検査を受けていない。

ジョン・ホプキンス大学の研究者による最近の研究で、SARS-CoV-2 の PCR 検査を感染初期段階で行うと、偽陰性になる可能性が高いことが分かっているからである。

ここでは PCR 検査と書かれていますから、PCR検査なのでしょう。

この検査をしない、という対応・判断は問題ないと思います。

 

感染判明後の経緯

診療所は今週中は閉鎖し、10月12日に暫定的に再開する予定である。

それまでの間、全スタッフは自宅隔離を行い、今後 PCR 検査を受ける予定である。

診療所内のすべての医療機器や環境表面は、専門的な手法で消毒する。

これらの追加対応は、公衆衛生行政機関(保健所)やADA、CDCによって文書化されたものでも要求されたものでもないが、Dr. Langland は、従業員らと慎重な対応をしており、追加対応が必要であると感じている、と語っている。

隔離期間は 10 日間、これは日本と同じですね。

他のスタッフは、日本で言うところの”濃厚接触者”には該当しない状況ですが、検査と隔離の指示が出ています。

日本であれば、濃厚接触者とは言えないので検査も隔離も必要なし、とされます。

環境表面の消毒は、日本では保健所から指示される項目です。

 

もし万が一、歯科医院で感染者が発生した時の対応はこちら ↓

www.masaomikono.com

 

歯科医院からの情報提供

 

Langland Dental Associates の HP には、検査結果が陽性であることが判明した後、Vashon Medical Reserve Corps や Emergency Operations Centerと協議して行った措置の概要が記されている。

HPによると、他の患者は当該従業員と接触しておらず、他の従業員においても、N95 マスクやフェイスシールド、グローブ、医療用スクラブなどを使用するように、とのADAの推奨に従っており、他の従業員のリスクもほとんどない、とのことである。

Langland Dental Associatesで感染したスタッフの人は、Dr. Langland によると、完全なPPEを身に着けていた。

 「我々は5月に診療を再開して以来、SARS-CoV-2が我々のコミュニティに存在し、今回のような事例が起こりうる、という仮定の下で診療をしている」と Dr. Langland は述べている。

また、「我々はウイルスを不活化する空調システムやエアロゾル低減システム、厳格なPPEのルールを導入し、CDCのガイドラインに準拠している。パンデミックの前でさえ、感染制御は私たちの診療の中核をなしていた。」と述べた。

 

 

Langland Dental Associates の HP

では実際に Langland Dental Associates の HP を確認してみましょう。

www.vashonislanddental.com

結構スッキリとしたデザインですね。 

 

トップページに 10月7日(水)10時00分投稿に投稿された、お知らせ文がありました。

 

お知らせ文詳細

従業員の検査結果で良いニュースがありました。

これまでのところ全て陰性です。

10月5日(月)に検査を行い、結果は10月6日(火)の夜に出ました。

10月9日(金)に再度検査を行い、その結果は10月12日(月)の開院前に判明する予定です。

 

以前報告したように、10月2日(金)に当該従業員が検査陽性であった後、この週末にCOVID-19 への対策を行いました。

今週は休診とさせていただきますが、今後も患者様や地域の皆様と、我々の行動履歴を共有していきたいと考えております。

 

まず、幸いなことに、感染した従業員は元気にしており、彼女が勤務していた日(9月29日 火曜日)に治療した 4 人の患者全員に、従業員が感染した旨の通知が出されました。

いずれの患者にも症状が出ていないことがわかりました。

4 人の患者と当該従業員は、感染症専門家のガイドラインに沿って自宅隔離しています。

”彼女が”と、女性であることを明示しています。

これは正直、無用心に思えなくもありませんが、行政の発表で女性であることが既に公然のこととなっているのであれば問題ありません。

ただ、感染拡大に必要のない情報でもあり、原則性別の公表は無意味だと思います。

 

第二に、他の患者さんは、感染した従業員とは接触していませんでした。

また、私たちの感染対策は高いレベルで実施しているため、他の従業員が感染した可能性はほとんどありません。

当院の従業員は、N95 マスクやフェイスシールド、グローブ、医療用スクラブを着用しています。私たちは、ADA のガイダンスに従っています。

 

第三に、オフィス閉鎖期間中は、MRC のガイドラインに沿って、医療機器や環境表面を含めた診療所全体の徹底した消毒を行っています。

 

第四に、感染していない他の従業員も全員、自宅隔離をしています。

10月5日(月)の検査結果は現在陰性で、9 日(金)に行われる 2 回目の検査で再び陰性になることを期待しています。

これらの検査の結果は次のステップに反映されますが、12日(月)には再開できるようにしたいと考えています。

2回目の検査が陰性であった場合、診療再開が可能となると伝えています。

 

私たちは、Vashon Be Preparedと信じられないほど優秀なチームと緊密に連携し、患者さんとスタッフの安全を最大限に確保するために、すべての適切な措置が取られていることを確認しています。

ご質問やご不明な点がございましたら、遠慮なくオフィスにお電話ください。

当院では、予定されているすべての患者様に積極的に電話をかけ、この情報をお伝えしています。

患者様に安心して治療を受けていただくことが私たちの最大の関心事です。

またお会いできることを楽しみにしています。

 

 

まとめ

この Langland Dental Associates に、地域住民からどのような反応が寄せられているのかは分かりませんでした。

しかし報道の内容は十分に中立であり、HP と院長である Dr. Langland のインタビューに沿った内容でした。

実際に歯科医院で感染事例が発生したとき、どこまで情報公開をするべきか、悩ましいことは事実です。

今回の Langland Dental Associates の公表内容は、一部不必要に感じられる部分もありましたが、概ね良好な結果をもたらすような気がしました。

 

ザ・クインテッセンス 10 月号に寄稿した論文に、実際に日本の歯科医院で発生した感染事例の詳細と、歯科医院からの情報提供について記載しております。

こちらの”リアル”な実態も合わせて、参考になさってください。

 

また、万が一感染事例が発生した場合、連絡をいただければ全面的に対応サポートします。

 

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