歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

ADA「アメリカの歯科医院の感染対策は成功している。しかし経営はきびしい。だから... 」

先日、FOX ニュースが「アメリカの歯科医師のコロナ感染率が 1 % 未満であった」と報道したことをブログにいたしました。

masaomikono-sub1.hateblo.jp

 

そして ADA が「ADA が推奨し、アメリカの歯科医院の 99 % が準拠しているガイダンスが効果的であった(我々は正しかったのだ!)」とニュースリリースを出したこともブログにいたしました。

www.masaomikono.com

このブログで私は、ADA は自分たちのガイダンスの正しさを主張することで、今後の歯科医療のあり方、歯科医療の New Normal を方向付ける、まるで「世界の秩序は世界の警察官たる我々が作っていくのだ」と言わんばかりのアメリカンなマッチョ思想だな、と思わせてくれるものだと指摘しました。

 

次は何が出てくるか楽しみにしていたところ、さっそく大新聞に記事が掲載されました。

 

今日は、USA TODAY というアメリカで第二位、ウォールストリートジャーナルに次ぐ発行部数(約 250 万部)を誇るという新聞(wikipedia調べ)の web 版に掲載された記事を紹介します。

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www.usatoday.com

 

記事概要

  1. パンデミックにより多くの患者が歯科医院への受診を控えており、2割程度の患者数の落ち込みが見られている
  2. 多くの歯科医院が経営的に困難な状況にあり、これまで従業員の解雇や統廃合を行っており、診療報酬の増額も視野に入れざるを得ない
  3. 今後歯科医院の統廃合、大規模化が進んでいくことが予想されている

 

記事詳細

記事のうち、歯科医院の経営について述べられている部分を抜粋します。

 

患者数があと数ヶ月間現在のレベルのままであれば、歯科医師は、雇用の削減診療所の売却だけでなく、保険(メディケア・メディケイド)適用患者を含めた診療報酬の引き上げを真剣に検討するだろうと、ADA は述べています。

before コロナと比較して2割程度、患者数が減っており、かつ感染対策に追加の費用がかかっているため厳しい状況にあると述べています。

そのため診療報酬の引き上げも止むを得ない、と主張しています。

 

「我々にとって次の数ヶ月は非常に重要である。私は、追加の解雇廃業があると考えている。そのことは、今の状態は持続可能な状態ではないことを示唆するものである」と ADA のエコノミストである Vujicic 氏は述べている。

このまま何も手を打ってくれないのであれば、歯科医療は持続できないぞ、と主張(脅し?)しています。

 

(中略) 

患者が歯科医院に戻らないため、歯科医が助けを求めるようになった。

ADA によると、一時的にシャットダウンしたとき、約 9 割の歯科医師は、返済不要なものも含む政府からの金融支援を申請した。

 

「それが実際にスタッフの雇用を維持するのに役立っている。そうでなければ、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと悪くなっていただろう(It would have been much, much, much, much worse)」と Vujicicic は述べた。

要するに支援が必要だと主張しています。

 

しかし、彼らはまだ苦しんでいる。ADAは歯科医師が、感染対策に1患者あたり15 ドルから 20 ドルを追加で費やしていると推定している。

一部の歯科医師は、料金の値上げという形で患者にこれらのコストを転嫁している。

また、患者がお互いに接触しないようにするため、また清掃の時間や患者間の時間を確保するために、通常のように多くの患者を見ることができない。

具体的な数字を上げています。

 

まとめ

ADA はうまく主張しています。

① 歯科医師の感染率は 1 % 未満であり、予想よりも低かった

② その理由は ADA や CDC のガイダンスが正しく、99 % の歯科医師がそれを守ったからだ

③ 安全に歯科医療を提供しているにもかかわらず、多くの歯科医院の経営は苦しい ←New!!

④ 患者一人あたり 15〜20 ドルの報酬の追加が必要である ←New!!

⑤ 支援してくれないと歯科医療は存続できないかもしれないよ! ←New!!

しっかりと感染率の調査を行い、それを根拠に診療報酬の増額を求めているのです。

 

単なるアンケート調査ではなく、感染率が低かったと科学的に示せたことを、最大限活用しています。

これは(若干強引な部分もありますが)よい EBPM の見本だと思います。

 

お気持ちではなく、根拠を示せると強いですよね。