歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

【改訂版】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)歯科医療機関内発生時チェックリスト

はじめに

7月27日にも、歯科医院で COVID-19 が発生した場合の対応チェックリストを公開いたしました(現在非公開)。

その後、種々の変更点や相談をいただいた事例で経験したことを踏まえ、本改訂版を作成いたしました。

 

歯科医院を取り巻く状況

本ブログを記述している 11 月 14 日現在、1 日あたりの検査陽性者数(マスコミでは感染者数と報道されているもので、厳密には異なる*1)が過去最大となっています。

 

4〜5 月頃よりも検査能力が拡大(3〜4 倍)しているため単純な比較は避けるべきですが、検査陽性率*2が上昇していることから考えても(下記リンク)、安心できる状況とは決して言えないでしょう。

 

また検査陽性者のうち、感染経路不明例が増えていることも気になるところです。

(注. いずれも東京都の数字を見ています)



歯科医院のスタッフや患者さんに検査陽性者が出る可能性は、これまでより高くなっていることが予想されます。

(風評被害が起こること自体がおかしいと思いますが、実態として)風評被害から歯科医院を守り、スタッフや患者さんを守るために、本チェックリストをぜひご活用ください。

 

実際の感染事例への対応をチェックリストに活かしています

ザ・クインテッセンス 10 月号に、私が対応をお手伝いした、某県歯科医院での感染事例の経過を記載した論文を投稿いたしました。

また、こちらの事例以外にも、公開はできませんが複数件のご相談を全国の歯科医院からいただいております。

後述しますが、歯科医院の初動対応があまり良くなかったために困難な状況に陥った例もありました。

それらの貴重な経験を通して得られた教訓を交え、チェックリストを更新いたしました。

 

チェックリストの目的

① ウイルスの持ち込みを出来るだけ防ぐこと

② 感染事例が発生しても感染拡大を出来るだけ防ぐこと

休診せざるを得なくなっても、スムーズに診療を再開できるようにすること

各歯科医院でそのまま活用できるものを目指しました。

 

備考  

末尾に「用語の定義」を記載しております。

必要に応じて先に確認してください。

 

目次

 

概要

チェックリストは以下の3つのフェーズに大別されます。

① 準備期

② 感染事例発生期

③ 診療機能回復期

 

また、チェック項目は以下の3つに大別されます。

① マネジメント

② 疫学調査への協力

③ 感染対策

 

※なぜ疫学調査への協力が必要なのか?

地域社会における感染制御の観点からはもちろんのこと、風評被害防止のためにも重要です。

保健所が行うクラスター対策は、

『感染源の推定(さかのぼり調査)および濃厚接触者の把握と管理(行動制限)という古典的な接触者調査を中心』

としており、

クラスターの発端が明確で、濃厚接触者のリストアップが適切であれば、既に囲い込まれた範囲で次の感染が発生するため、それ以上のクラスターの連鎖には至らない』

としています。

 

つまり確実に連鎖が追えている限り、保健所が地域住民に対して「〇〇歯科医院でクラスターが発生しました」とアナウンスする必要はありません。

逆に連鎖が追えない場合は公表される可能性が高いです。

 

公的なアナウンスがなければいわゆる風評被害が出ないわけではありませんが、無駄な報道をされるリスクを減らすことができます。

もちろんこれは「隠蔽するな!」などの類の風評被害対策として、「あえて公開する」という経営判断を否定するものではありません。

 

 

準備期

この準備期が重要です。

地味で大変ですが、何事も備えておくことは大切です。

 

マネジメント

体調不良時の欠勤体制の構築

ウイルスの持ち込みを極力減らすことができます。

地域のネットワークの構築

「もしも」のときに患者を紹介できる近隣の歯科医院を確保しておきましょう。

これはお互いに助け合う体制が取れるとなお、よろしいかと思います。

適切な助言が得られる専門家の確保

「もしも」のときに頼れる人を確保しておきましょう。

身近にいらっしゃらなければ、私に相談してください。

 

疫学調査への協力の準備

スタッフ名簿の作成

すぐさま連絡が取れるよう、スタッフ名簿を作成しておきましょう。

また、ダブルワークの把握も重要です(他の医療機関や教育機関等)。

 

健康管理表(発熱サーベイランス)を用いた自己管理

異常を早期に察知するためには、「異常がない状態」の認識が必要です。

普段から健康管理をしておくことで、早期に異常に気がつくことができます。

妊娠可能期の女性の体温はデリケートな個人情報ですので、一元的に歯科医院で管理することはお勧めしません。

 

健康管理表はこちらからpdfをダウンロードしてご活用ください。(接触者に用いられる健康調査票をもとに作成しています)

健康管理表.pdf - Google ドライブ

 

接触確認アプリ(COCOA)のダウンロード推奨

行動履歴の調査に役立ちます。

また、万が一感染者と接触していても、いち早くその情報が通知され、歯科医院内へ持ち込むリスクを最小限に止めることができます。

スタッフはもちろん、患者さんや委託業者にも推奨しましょう。

周知用のポスターはこちら

 厚生労働省 新型コロナウイルス接触確認アプリ(通称:COCOA)(PDF:797KB) 

 

患者連絡先の確認

電話番号が変わっていたり、勤務先の電話番号であったり、と追跡調査に支障をきたす可能性があるため確認しておくことをお勧めします。

また付き添い人も追跡調査の対象になることがありますので、来館者の記録も重要です。
入館者名簿を作成しましょう。

 

入館者名簿はこちらからpdfをダウンロードしてご活用ください。

入館者名簿.pdf - Google ドライブ

 

委託業者等の連絡先の確認

委託業者の出入りがある場合、連絡先が派遣元しか分からない場合もあろうかと思います。

また休業時の補償など、一度話をしておくと良いでしょう。

 

感染対策

標準予防策、飛沫・感染予防策の実施および感染対策の教育

理解度の確認にはこちらのミニテストをご活用ください。

 

院外でのハイリスクな行動を回避する

徹底的に”3密”と”5つの場面”を回避しましょう。

「5つの場面」とは、10 月 23 日に新型コロナウイルス感染症対策分科会から出された、政府への提言の中に記された、感染リスクが高まる行動様式を示したものです。

分科会から政府への提言

f:id:masaomikono:20201114150439p:plain

今後、忘年会や新年会、歓送迎会を企画している歯科医院もあろうかと思いますが、感染対策には十分お気をつけください。

ガイドラインを遵守している飲食店はリスクが低いことが分かってきていますが、そこでの行動はお客さん次第です。

 

なお、個々人の行動履歴を歯科医院側で把握する必要はありません。

 

患者待合室が密にならないような配慮、介入

これは既に取り組んでおられる歯科医院が多いと思います。 

 

患者に対する治療時以外のマスク着用の依頼(幼児等を除く)

これも既に取り組んでおられる歯科医院が多いと思います。 

 

更衣室や食堂、休憩室等が密にならないような配慮、介入

感染リスクが高まる「5つの場面」で明らかであるように、食事や休憩中の過ごし方に気を付ける必要があります。

出勤・退勤時間や食事の時間、休憩の時間をずらしたり、食事中の会話を制限する必要があります。

私の経験した事例でも、休憩室で感染が拡大したり、休憩室での過ごし方を根拠にスタッフが濃厚接触者と認定された歯科医院がありました。

 

感染しないためにはもちろんのこと、14 日間の自宅待機が必要な濃厚接触者と認定されないためにも、スタッフの共有スペースへの対策は十分に配慮してください。

 

準備期のチェックリスト

準備期のチェックリストはこちらからダウンロードしてご活用ください。 

またチェックリストは定期的に更新するようにしましょう。

drive.google.com


 

感染事例発生期

感染事例の把握と保健所の電話調査に対する準備 《重要》

スタッフが感染した場合、スタッフからの検査陽性の連絡を受けてから、保健所の電話調査までは、非常に短期間(通常半日〜1日)です。

また、感染したのが患者さんの場合、何の前触れもなく保健所から電話がかかってきます。

そしてこの電話調査により、他のスタッフや患者さんが濃厚接触者に該当するのかどうかが決定します。

したがってこの保健所からの電話への応対は、その後を左右する非常に重要なものなのです。

元からの休診日であれば落ち着いて対応できますが、診療日であれば診療中に電話がかかってくることも普通にあります。

 

この時の初動対応を誤ると、後々困ったことになります。

 

某県の歯科医院では、この電話を受付スタッフが対応した結果、誤って全スタッフが濃厚接触者と認定され、数日間の休診を余儀なくされてしまいました。

後日誤解が解けて診療を再開できましたが、関係各所への説明に非常に苦労されていました。

(受付スタッフは緊張のあまり、頭が真っ白になってしまったそうです。こればかりは慣れないことでしょうから、仕方ないと思いました。)

 

したがって、検査陽性の連絡を受けてから半日程度で、保健所の電話調査に正しく回答できるよう、以下のマネジメントをしなければなりません。

 

マネジメント

対策チームの立ち上げ

特に院長等の管理者が感染した場合に対応する人を決めておく必要があります。

対策チームは以下の1〜5を遂行します。

  1. 疫学調査への協力
  2. 勤務調整
  3. 地域ネットワークを活用した他院との連携
  4. 館内の消毒
  5. 院外への情報公開

 

疫学調査への協力

保健所の電話調査への準備

スタッフが検査陽性であった場合、(体調が電話できるくらいであれば)本人から歯科医院へ連絡があります。

出勤簿や予約表、入館者名簿を見て、当該スタッフの行動(検査日の2日前、または発症日の2日前から)を明らかにしておく必要があります。

 

接触者のリストアップ

感染者の行動履歴(保健所の調査を補完する形になる)から接触者をリストアップします。

スタッフの出勤簿予約表入館者名簿を用意しましょう。

対象となるのは検査日の2日前、または発症日の2日前からです。

素早く対応すれば、その分だけ診療機能回復までの時間が短縮できます。

 

濃厚接触者のリストアップ

保健所が感染者や医療機関から聞き取りを行い、濃厚接触者を認定します。

スタッフの出勤簿予約表入館者名簿を用意しましょう。

対象となるのは検査日の2日前、または発症日の2日前からです。

濃厚接触者には、保健所が個別に聞き取り調査を行います。

 

スタッフが濃厚接触者と認定された場合、検査陰性でも14日間の自宅待機が要請されます。

すぐに勤務調整を行いましょう。

 

接触者へ連絡

スタッフ名簿患者連絡先入館者名簿をもとに、保健所の指示に従い接触者へ連絡します。

 

 

接触者のPCR検査《重要》

最近では濃厚接触者だけでなく、接触者に対しても PCR 検査が行われる事例を複数経験しています。

検査余力があること、医療機関のスタッフには積極的に検査をするように、との 8 月 7 日に出された厚生労働省からの通達(下記リンク、画像)があること、がその理由と考えられます。

 

厚生労働省の通達
・医療機関における新型コロナウイルス感染者発生時の行政検査について
https://www.mhlw.go.jp/content/000658101.pdf

f:id:masaomikono:20201114185327p:plain

一部抜粋

 

医療従事者は感染リスクが相対的に高く、また感染した時に周囲(ハイリスク患者)に与える影響が大きいため、積極的に検査をしましょう、という通達です。

同様の通達は 10 月 16 日にも発表されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000683611.pdf

 

これ自体は合理的なものだと思いますが、歯科医療従事者が一律に該当するのか、については考慮する必要があります。

例えば歯科訪問診療を積極的に行っている、またはスタッフに基礎疾患を抱えたものがいる、地域の検査陽性者数が多いなど、個々の歯科医院によっても必要性が異なるでしょう。

 

実際の感染事例では、保健所からは「念のため検査してはどうですか」「希望があれば検査しますよ」と言われました。

これは決して無責任な態度ではなく、要するに「歯科医院は医療機関なんだから自分で判断してください」ということだと考えています。

 

「自分で判断」って、どうすればいいの?

ここで注意すべきことが3つあります。

1. 濃厚接触者ではないので(一般的に)陽性的中率が下がる

事前確率が低いため、陽性的中率が低い状態で検査を受けることになります。

 

また PCR 検査の感度は発症前では 0 %、発症前日でも 33% という報告もあります。

 


2. 濃厚接触者ではないので 14 日間の隔離は必要ない

これは実際に通達にも記載されている通りです。

検査対象者は濃厚接触者として取り扱うことはしないこと(14 日間の健康観察の対象としない)

ところが、接触者として PCR 検査を希望して受診された方に保健所から「PCR 検査を受けた方へ」という用紙が配布され、そこには「14 日間、自宅で待機してください」との記載がありました。

また保健所から直接「念のため 14 日間、自宅待機してください」と要請された事例もありました。

 

3. 検査結果が陰性=感染していない、ではない

PCR 検査に限らず、どんな検査も万能ではありません。偽陽性、偽陰性の問題は常につきまといます。

事前確率が低い場合、理論上偽陰性は少ないのですが、検査をした直後から感染の可能性はあるわけですから、これまで行ってきた感染対策を続けるのみです。

 

「不安なので検査を受けたい」という気持ちは分からなくもないですが、検査を受けても安心は手に入りません。

「検査を受けても安心を手に入れることはできない」ということ、1.〜3.の注意点、歯科医院の状況、個々のスタッフの状況などから、結果の解釈を含めて総合的に判断できてはじめて、検査を受けるかどうかの判断ができます。

 

総合的な判断に際して検査に関する情報は、こちらの記事を参照してください ↓


また当然ですが、検査を受けるかどうかの判断は早期に行う必要があります。

判断に困る場合はご相談ください。

なお、検査を受けても受けなくても、14 日間の健康観察は必要です。

 

勤務調整

館内の消毒にかかる時間を確保する

出勤できるスタッフを確認し、必要に応じて診療体制を変更する

患者に診療予約の変更等を依頼する

出入りする委託業者等と連絡を取り、今後の対応を決定する

感染者が出たときの業務停止義務はありません

 

地域ネットワークを活用した他院との連携

必要に応じて他院へ患者を紹介する

 

館内の消毒
  • 消毒は保健所職員が行うわけではありません。業者に委託するか、歯科医院のスタッフが行います。
  • 消毒で使用する薬剤は0.05%次亜塩素酸ナトリウム、または70%アルコールです。
  • 消毒が必要な範囲は保健所が指定することもありますが、指示がないことのほうが多いです。「医療機関なので自分で考えてください」ということでしょう。
  • 消毒を行うときのPPE
    露出面を出来るだけ少なくする
    マスク、グローブ、ガウン、ゴーグルを装着する

 

院外への情報公開

個人情報保護法の運用方法が自治体ごとに異なるため(cf. 2000個問題)、以下に示した判断は自治体によって変わる可能性があります。ご容赦ください。

 

7月28日付けで厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症が発生した場合における情報の公表について(補足)」という資料が公開されました。

https://www.mhlw.go.jp/content/000652973.pdf

以下、ポイントを抜粋します。

 

接触者を把握できていない場合には、「不特定多数と接する場所の名称」、「他者に感染させうる行動・接触の有無」等を公表する。

公表に際して、関係者の同意は必要ない。

”接触者が把握できていない場合”という状況は、歯科医院ではあまりないでしょう。

しかし、もしそうした状況に陥った場合は歯科医院名が公表されます。

念のため入館者名簿を作成しておきましょう。

 

感染の要因が、業種別で作成されているガイドラインに掲載しているような感染防止策を適切に講じていなかった場合には、不十分だった対応を具体的に公表することで、感染防止策の徹底につなげていく。

内閣官房が示した”業種別ガイドライン”には歯科は含まれておりません。

https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline.pdf

 

医療機関ですから、医療機関で取るべき感染防止策が取られていなかった、と判断されれば公表されてしまうのかもしれません。

ただ単に歯科医院名を公表されるよりもダメージは深刻でしょう。

感染対策が不十分だった、と烙印が押されるわけですから...

 

また、同じく7月28日に内閣官房から発表された「飲食店等におけるクラスター発生防止のための総合的取り組み」という文書においても、同様の記載がなされています。

https://corona.go.jp/news/pdf/insyokuten_torikumi_0729.pdf

以下、抜粋します。

クラスターなどの感染者が発生し、感染経路の追跡が困難な場合、感染拡大防止の観点から店舗名を公表する扱いとなっており、当該公表において関係者の同意が必要なものではないとともに、ガイドラインに掲載しているような感染防止策が適切に講じられていなかったことが感染の要因であると考えられるときは、その旨を公表して感染防止策の徹底を促すことを改めて周知する。

 

 

・クラスターと認定された場合

歯科医院名が公開されることがあります(滋賀県の事例)。

個人的には接触者の追跡が行えているのであれば不要だと思います。

 

・接触者の追跡が行えていない場合

歯科医院ではあまり考えにくい状況ですが、公開される可能性が高いでしょう。

付き添い人や出入りする業者の情報を得ておきましょう、とした理由がこちらです。

 

・感染者は初発の1名のみで、濃厚接触者が認定された場合

情報公開を行う、行わないの判断、どのような内容にするか、も含めて歯科医療機関に委ねられます

もし情報公開を行う場合に必要な項目としては、

  1. 患者(確定例)の病歴および行動歴
  2. 推定される感染経路
  3. 対応内容(患者さんへの感染の可能性の有無等)
  4. 今後の対応
  5. その他(院長から患者さんへのメッセージ等)

あたりでしょうか。

プライバシーに十分配慮し、必要十分な情報提供にとどめましょう。

 

・感染者は初発の1名のみで、濃厚接触者が認定されなかった場合

感染者が患者の場合、原則公開する必要はないでしょう。

感染者がスタッフの場合も原則公開する必要はないですが、諸事情により公開することもありました。

この辺りは歯科医院ごとに状況が異なりますので、ご相談いただければお手伝いいたします。

 

感染対策

問題点の抽出

感染対策上の問題点がなかったか点検を行い、必要に応じて改善を行います。

また必要に応じて専門家の助言を得ましょう。こちらもご相談いただければ承ります。

 

感染事例発生期のチェックリスト

チェックリストはこちらからpdfをダウンロードしてご活用ください。

drive.google.com

 

小括

感染事例発生期の対応、特に事例を把握してからの数日は、その後を左右する非常に重要な期間です。

慌てずに対応できれば大きな問題はないのですが、なかなかそう簡単にはいかないようです。

感染事例が生じた時は、すぐに私にご連絡いただければお手伝いいたします。

 

診療機能回復期

マネジメント

事例全体の振り返り

感染対策のみならず、マネジメントや疫学調査への協力も通した総合的な問題点を抽出し、次の事例発生に備えるようにしましょう。

 

再度患者を受け入れる体制の構築

診療を再開する旨、お知らせしましょう。

 

委託業者等との連携

業務再開について協議が必要であれば行いましょう。

 

 

感染対策

継続した教育・指導の実施

定期的な教育機会を確保しましょう。

必要に応じて専門家による現地視察を依頼しましょう。

 

診療機能回復期のチェックリスト

チェックリストはこちらからpdfをダウンロードしてご活用ください。

drive.google.com

 

まとめ

患者さんやスタッフが感染しない、という前提はもはや成り立ちません。

「0→1」(1例発生すること)は出来るだけリスクを下げる努力は必要ですが、基本的には受け入れるしかありません。

 

我々が目指すべきことは「1→2」を出来るだけ防ぐこと、
そして「0→1」が発生したときに出来るだけ診療体制の停止・縮小を最小限にすることです。

 

一見相反するこの2つの目標は、上述した通り両立することが可能です。

今回作成したチェックリストは、その目標達成に役立つと思います。

 

個別のご質問、ご相談は気兼ねなくご連絡いただければお手伝いいたします。

メールまたはFacebookのメッセンジャーからお願いいたします。

masaomikono*gmail.com (*を@に変えてください)

詳細は以下の記事に記載しております。ご確認ください。

  

用語の定義

患者(確定例)

臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、かつ、検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者

症状あり、検査陽性、ということです

 

無症状病原体保有者

臨床的特徴を呈していないが、検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者

症状なし、検査陽性、ということです

 

患者(確定例)の感染可能期間

症状を呈した日の2日前から入院や自宅待機開始までの間

1〜2日前は無症状ですから我々はおろか、本人も気づいていません。こうした方が受診する可能性はゼロではなく、避けることは不可能です。

従って「0→1」を防ぐことは諦めて、「1→2」を防ぐ対策を取りましょう。

 

無症状病原体保有者の感染可能期間

陽性確定にかかる検体採取日の2日前から入院や自宅待機開始までの間

 

濃厚接触者

患者(確定例)(以下、無症状病原体保有者を含む)の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者

① 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者

② 適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者

③ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者

④ その他:手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで患者(確定例)と15分以上の接触があった者(周囲の環境や接触の状況等個々の状況から総合的に判断する)

患者→医療従事者では②、③が、

医療従事者→患者では④が、

医療従事者間では④が、調査ポイントとなるでしょう。 

 

疫学調査の準備をしておくと、多忙を極める保健所の負担軽減にも寄与することができます。同じ医療従事者を応援するためにも、ぜひ準備をしておいてあげてください。

 

就業制限

患者(確定例)に対して、感染症法に基づき出されるものです。

隔離の対象となります。

 

自宅待機

濃厚接触者のうちPCR検査で陰性であった者が対象です。自宅で保健所の指導のもと健康管理を行い、発症しなければ 14 日間で解除されます。

もし身近に患者(確定例)がいたとしても、濃厚接触者にならなければ就業制限はもちろん、自宅待機の対象にはなりません。

例えばスタッフの1人が感染しても、他のスタッフが濃厚接触者に認定されなければ歯科医院の休診は不要です。

 

これまでの歯科医療機関における感染事例から分かること

① 患者(確定例)がスタッフの場合

治療を受けた患者が濃厚接触者として認定されることもあるようです。

他のスタッフが濃厚接触者として認定されるかどうかは状況次第(=感染対策の実施状況次第)です。

② 患者(確定例)が患者の場合

治療をした歯科医療従事者は、濃厚接触者の定義②及び③に該当しない限り、濃厚接触者として認定されません。

適切な感染対策が行われていないと、濃厚接触者として認定されてしまいます。 

 

参考文献

1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)医療施設内発生対応チェックリスト、国立感染症研究所感染症疫学センター(2020年7月8日)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9735-covid19-21.html

2. 新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領、国立感染症研究所感染症疫学センター(令和2年5月29日)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9357-2019-ncov-02.html

3. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版、日本環境感染学会(2020年5月7日)

http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide3.pdf

4. 医療機関における新型コロナウイルス感染症発生に備えた体制整備及び発生時の初期対応について(助言)、新型コロナウイルスに関連した感染症対策に対する厚生労働省対策推進本部クラスター対策班接触者追跡チーム

https://www.mhlw.go.jp/content/000627464.pdf

5. 新型コロナウイルス感染症が発生した場合における情報の公開について(補足)、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部(令和2年7月28日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000652973.pdf 

6. 飲食店等におけるクラスター発生防止のための総合的取組、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室(令和2年7月28日)

https://corona.go.jp/news/pdf/insyokuten_torikumi_0729.pdf

7. 新型コロナウイルス感染症に係る行政検査に関するQ&Aについて、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部(令和2年7月15日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000649455.pdf

8. 医療機関における院内感染対策のための自主点検等について、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部(令和2年7月31日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000655349.pdf

9. 無症状者に対する SARS-CoV-2 検査での注意点、一般社団法人日本感染症学会ほか(令和2年7月31日)

http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_musyojo_200804.pdf

10. 医療機関における新型コロナウイルス感染者発生時行政検査について、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部(令和2年8月7日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000658101.pdf

11. そうだったのか!居酒屋などでの感染予防 ~お客様への対応編~、厚生労働省(令和2年9月17日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000674034.pdf

12. 医療施設等における感染拡大防止のための留意点について(その2)、厚生労働省医政局総務課ほか(令和2年10月15日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000685821.pdf

13. 医療従事者・介護従事者の中で発熱等の症状を呈している方々について、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部(令和2年10月16日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000683611.pdf

14.  分科会から政府への提言  感染リスクが高まる「5つの場面」と「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」、新型コロナウイルス感染症対策分科会(令和2年10月23日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000687179.pdf

15. 新型コロナウイルス感染症の論点(I) ―感染拡大抑止の科学的根拠と検査のリスク・ベネフィット、鎌江 伊三夫、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス, 2020; 51: 500-513

https://cigs.canon/uploads/2020/11/8fbb66ee524d7b169a3d6e4ead9d19e89c5c0318.pdf 

 

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masaomikono*gmail.com (*を@に変えてください)

 

詳しくはこちらをご覧ください。

masaomikono-sub1.hateblo.jp

*1:真の感染者数=検査陽性者数ー偽陽性者数+偽陰性者数。真の感染者数は神のみぞ知るものですが、理論上、真の感染者数>検査陽性者数です(文献15を参照のこと)。日本の対策はそれを踏まえたものになっていますのでご安心を。

*2:1 日の総検査数に対する陽性者数の割合を示したもの。検査能力や事前確率によって大きく左右されるが、基本的には検査陽性率は市中の流行状況を反映していると考えられている。
検査能力が低かった 3〜4 月では 30% を超えることもあり、補足できていない感染者が一定数おり、実際の感染者数はさらに多かったと考えられる。最近は 3% 程度を推移していたが5% 程に上昇している。