河野雅臣 歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

歯科治療で発生する”いわゆるエアロゾル”にウイルスは含まれているのか

Journal of Dental Research に「歯科エアロゾルに含まれる SARS-CoV-2 や他の微生物の供給源(河野訳)」という興味深い論文がありました。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

表題は挑戦的なものにしましたが、正直申し上げて難しくてよく分かりませんでした...。

特に「Sequencing and Analysis Pipeline」の段落です。ここの実験手法が理解できないと批判的吟味ができません...。

Amplicon sequence variants (ASV) って何なのでしょう?

16s rDNA の V1〜V5 領域を liner discriminant analysis で二次元化したところまでは(合ってるかどうか不安はありますが)理解しましたが、Fig. 1 の縦軸、横軸の LD って何を指すのでしょうか?そしてその数値も何を意味するのでしょうか?

大変情けない限りですが、分からないものは分からないのですから仕方ありません。

もしお詳しい方いらっしゃいましたらご連絡いただければ幸いです。

 

おおよその内容

ユニット配管の水、唾液、エアロゾル(患者、術者、助手、環境表面に付着あるいは落下したもの)から微生物の 16s rDNA を検出。

コントロール群(ユニット配管の水とインプラント用の生理食塩水)との差分を、エアロゾルによってもたらされた微生物とした。

結果

① エアロゾル中の微生物のほとんど(78%(2.5〜100%))がユニット配管由来であった。唾液からの微生物はほぼなく(0%(0〜82%))、由来が分からない微生物が20%(0〜90%)存在した。

② SARS-CoV-2 陽性患者において、唾液中にはウイルスが検出されたが、エアロゾル中からはウイルスが検出されなかった。

考察

唾液量と冷却水の分量比は大きく、唾液がかなり希釈されたと考えられる。

逆にユニット配管系の汚染が、過去にレジオネラ肺炎(死者が出た報告が2例ある)を起こすなど、危険視されていたことを裏付ける結果となった。

エアロゾルが発生する処置の感染リスクは小さいのではないか。

 

私見

エアロゾルがはっきり定義されていない。この論文では、患者・術者・助手・環境表面に付着あるいは落下したものをエアロゾルとして取り扱っているが、それは飛沫ではないか?空気サンプリングをするべきであったと思う。

診療室の換気条件が「6-exchange/min ventilation」となっているが、1分で部屋の空気が6回も入れ替わるのはおかしい。暴風では?minではなくhourであろう。とするとあまり換気条件が良い部屋ではない。空気サンプリングをすべきだったと思うもう一つの理由。

唾液に感染力のあるウイルスが含まれ、かつ複製可能であることは他の研究で明らかとなっている。一般的に接触感染の頻度は低いと考えられているが、歯科環境ではむしろ気をつけるべきは接触感染と言えるかもしれない。今後ワクチンが普及し、新規感染者数が少なくなった時、歯科医院で感染者が出た時に問題になる可能性がある。

 

さいごに

念のため申し上げておきますが、本研究は”いわゆるエアロゾル”ではなく、飛沫を調査したものと考えています。

換気や口腔内外バキューム、ラバーダム、4ハンドでの治療など、各種対策の重要性はこれまでもこれからも変わりません(今のところ)。

 

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