歯科医師・博士(感染制御学)

感染制御学の博士号を持つ歯科医師です。新型コロナウイルスを含む、感染対策について発信するブログです。

ダウン症候群では COVID-19 による入院リスクが 5 倍、死亡リスクが 10 倍であった

イギリスで行われた約800万人を対象としたコホート研究により、ダウン症候群とCOVID-19との関係が調査されました。

www.acpjournals.org

論文内容

primary outcomeはCOVID-19関連死、secondary outcomeはCOVID-19関連入院。

 

年齢や性別、人種、居住環境、心疾患の有無を調整した後のダウン症候群患者における COVID-19 関連死の HR は 10.39(95% CI: 7.08-15.23)であった。

ダウン症候群以外の学習障害患者における COVID-19 関連死の HR は 1.27(95% CI: 1.16-1.40)。

施設入居者における COVID-19 関連死の HR は 3.85(95% CI: 3.62-4.10)

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また、ダウン症候群患者における COVID-19 関連入院の HR は 4.94(95% CI: 3.63-6.73)であった。

 

limitationとしては、前向き研究ではないので因果関係を示したわけではない、という当たり前の指摘と、調整因子を全て網羅しているわけではない、というこれも当たり前のもの。

論文に書いてないものとしては、これはイギリスの調査なので、この結果を日本にそのまま適応できるかどうか、という点。

 

(論文では他にも、基礎疾患ごとの死亡リスクが記載されており、こちらも興味深い内容でした。)

 

まとめ

追加の調査・研究はもちろん必要だが、この驚くべき結果が誤差だと考えたり、日本のダウン症候群患者には当てはまらないと考えるほうがナンセンスであろう。

日本においてもハイリスクな患者群への重点的な政策立案、感染対策の強化が望まれる。

また、こうしたハイリスク患者への歯科医療を提供している歯科医院への支援も必要であろう。(アピールポイントだと思いますよ〜)

 

 

ADA「アメリカの歯科医院の感染対策は成功している。しかし経営はきびしい。だから... 」

先日、FOX ニュースが「アメリカの歯科医師のコロナ感染率が 1 % 未満であった」と報道したことをブログにいたしました。

masaomikono-sub1.hateblo.jp

 

そして ADA が「ADA が推奨し、アメリカの歯科医院の 99 % が準拠しているガイダンスが効果的であった(我々は正しかったのだ!)」とニュースリリースを出したこともブログにいたしました。

www.masaomikono.com

このブログで私は、ADA は自分たちのガイダンスの正しさを主張することで、今後の歯科医療のあり方、歯科医療の New Normal を方向付ける、まるで「世界の秩序は世界の警察官たる我々が作っていくのだ」と言わんばかりのアメリカンなマッチョ思想だな、と思わせてくれるものだと指摘しました。

 

次は何が出てくるか楽しみにしていたところ、さっそく大新聞に記事が掲載されました。

 

今日は、USA TODAY というアメリカで第二位、ウォールストリートジャーナルに次ぐ発行部数(約 250 万部)を誇るという新聞(wikipedia調べ)の web 版に掲載された記事を紹介します。

f:id:masaomikono:20201019221113p:plain

www.usatoday.com

 

記事概要

  1. パンデミックにより多くの患者が歯科医院への受診を控えており、2割程度の患者数の落ち込みが見られている
  2. 多くの歯科医院が経営的に困難な状況にあり、これまで従業員の解雇や統廃合を行っており、診療報酬の増額も視野に入れざるを得ない
  3. 今後歯科医院の統廃合、大規模化が進んでいくことが予想されている

 

記事詳細

記事のうち、歯科医院の経営について述べられている部分を抜粋します。

 

患者数があと数ヶ月間現在のレベルのままであれば、歯科医師は、雇用の削減診療所の売却だけでなく、保険(メディケア・メディケイド)適用患者を含めた診療報酬の引き上げを真剣に検討するだろうと、ADA は述べています。

before コロナと比較して2割程度、患者数が減っており、かつ感染対策に追加の費用がかかっているため厳しい状況にあると述べています。

そのため診療報酬の引き上げも止むを得ない、と主張しています。

 

「我々にとって次の数ヶ月は非常に重要である。私は、追加の解雇廃業があると考えている。そのことは、今の状態は持続可能な状態ではないことを示唆するものである」と ADA のエコノミストである Vujicic 氏は述べている。

このまま何も手を打ってくれないのであれば、歯科医療は持続できないぞ、と主張(脅し?)しています。

 

(中略) 

患者が歯科医院に戻らないため、歯科医が助けを求めるようになった。

ADA によると、一時的にシャットダウンしたとき、約 9 割の歯科医師は、返済不要なものも含む政府からの金融支援を申請した。

 

「それが実際にスタッフの雇用を維持するのに役立っている。そうでなければ、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと悪くなっていただろう(It would have been much, much, much, much worse)」と Vujicicic は述べた。

要するに支援が必要だと主張しています。

 

しかし、彼らはまだ苦しんでいる。ADAは歯科医師が、感染対策に1患者あたり15 ドルから 20 ドルを追加で費やしていると推定している。

一部の歯科医師は、料金の値上げという形で患者にこれらのコストを転嫁している。

また、患者がお互いに接触しないようにするため、また清掃の時間や患者間の時間を確保するために、通常のように多くの患者を見ることができない。

具体的な数字を上げています。

 

まとめ

ADA はうまく主張しています。

① 歯科医師の感染率は 1 % 未満であり、予想よりも低かった

② その理由は ADA や CDC のガイダンスが正しく、99 % の歯科医師がそれを守ったからだ

③ 安全に歯科医療を提供しているにもかかわらず、多くの歯科医院の経営は苦しい ←New!!

④ 患者一人あたり 15〜20 ドルの報酬の追加が必要である ←New!!

⑤ 支援してくれないと歯科医療は存続できないかもしれないよ! ←New!!

しっかりと感染率の調査を行い、それを根拠に診療報酬の増額を求めているのです。

 

単なるアンケート調査ではなく、感染率が低かったと科学的に示せたことを、最大限活用しています。

これは(若干強引な部分もありますが)よい EBPM の見本だと思います。

 

お気持ちではなく、根拠を示せると強いですよね。

 

ADA の自画自賛から始まる? 歯科医療の New Normal

さて、昨日は FOX ニュースで報道された、「米国歯科医師のコロナ陽性率は 1 %未満」であったという記事についてサブブログで解説いたしました。

masaomikono-sub1.hateblo.jp

 

今日はその記事中で紹介されていた、ADA のニュースリリースをご紹介します。

 

リリース概要

  1. 歯科医師の SARS-CoV-2 の感染率は 1 % 未満であり、他の医療従事者よりも低かった
  2. ADA や CDC のガイダンスが正しかったので、この結果をもたらしたと考えている
    歯科医療の New Normal ?
  3. 今後もデータベースによる追跡調査を行う予定である

 

リリース詳細

歯科医師は SARS-CoV-2 の感染リスクが高いとされているが、2020年6月に収集されたデータに基づく報告によると、全国の歯科医師のうち検査陽性であったのは 1 %未満だったことが判明した。

この結果は、米国の他の医療従事者をはるかに下回っている。

6月のデータなので、今ではもう少し(累積であれば)増えていると思われます。

 

99%の歯科医師は、治療に際して、スクリーニングや強化した感染管理手順を採用していた。

JADA が出版に先駆けてオンラインで公開したこの報告書は、米国の歯科医師の感染率と COVID-19 に関連した感染管理の実践を初めて大規模に収集し、公表したものである。

これまでよりも感染対策を強化している歯科医院がほとんど、ということが伺えます。

 

論文の執筆者であり、ADA Science and Research Institute and Health Policy Institute の最高経営責任者である Marcelo Araujo, D.D.S., M.S., Ph.D.は「これは歯科医師と患者にとって非常に良いニュースです。これは、これまで歯科医師が行っていたこと、すなわち感染対策の強化と患者・歯科医療従事者への安全性への配慮に関する意識向上がうまく機能していることを意味しています。」と述べている。

何が正解であるのか分からなかった状態で出した暫定ガイダンスが上手く機能したのは、確かにその通りだと思います。

ただ、個別に何がどの程度影響したのか、までは分かっていません。

とにかく、今後ガイダンスを見直す(足し算はともかく、特に何かを引き算する)ハードルは上がったと言えます。

ADA の暫定ガイダンスはこちら ↓

www.masaomikono.com

 

論文の著者であり、シカゴに拠点を置くADA Science and Research Institute and Health Policy Instituteの研究者でもある Dr. Araujo は、今後も歯科医師の感染率データを継続的に収集し、報告する予定であり、米国歯科衛生士協会との協力のもと、歯科衛生士も調査対象にしていると付け加えた。 

こうしたデータベース研究は期待したいです。日本でも出来たらいいとは思います。

そのうち歯科衛生士のデータも出てくるものと思われます。

もう半年くらい前だと思いますが、一部で、歯科衛生士が最も危険な職業だ、との不可思議な言説がありましたが、どのような結果が出てくるのでしょう。

 

この論文では、6 月に約 2,200 人の歯科医師に焦点を当てており、調査前 1 ヶ月間は 82 % の歯科医師が無症状であったこと、16.6 % の歯科医師が検査を受けたことが分かった。

検査を受けた歯科医師は、特定の地域に集中しているわけではなかった。

検査を受けていない人のうち、COVID-19の診断を受けたのは 1 %未満(0.32% )であった。

この結果を国内の歯科医師数や地理に関して重み付けした結果、推定有病率は
1 % 未満(0.9%)、誤差は 0.5 % であったと報告している。

アメリカの調査結果ですので、そのまま日本に当てはめることは出来ませんが、(ほとんど対策することを放棄して)あれだけ感染が拡大しているアメリカで 1 % 未満というのは、結構いい数字だと思います。

逆に日本でこれを証明しようとしても、そもそも全体の感染率が低いので難しいと思います。

 

Araujo 博士は

「SARS-CoV-2の感染に関連するリスクを理解することは、患者・歯科医療従事者の安全性を向上させる上で非常に重要です。

この研究は、どのような対策が有効なのか、という理解を一歩前進させました。

今回、米国内の歯科医師は ADA と CDC のガイダンスに従っていることが分かり、それが患者・歯科医療従事者の安全を可能な限り確保することに役立っていました。」

と述べています

99 % の歯科医師が実行した ADA と CDC のガイダンスが結果的に正しかったことを強調しています。

これは、今後もこのガイダンスが継続される見込みが大きいことを示しています。

 

3 月にニューヨークタイムズ紙は、米国労働省のデータベースである O*NET のデータに基づいて SARS-CoV-2 の感染リスクが最も高い職業の 1 つとして歯科医療従事者をリストアップしました。

これは、歯科医師と患者の距離が近いことや、多くの歯科処置では感染者のウイルス粒子を含むエアロゾルが発生することから、ウイルス感染が起こる可能性があると推測されていました。

O*NET ってどこかで聞いたな、と思いましたが、以前 プレジデントオンライン に掲載された歯科バッシング記事のソースとなったデータベースですね。

ブログにもしています。

詳細はこちら ↓ (こちらをお読みになってから次に進むと理解が深まります)

www.masaomikono.com

 

このブログでも指摘しましたが、O*NET そのものは米国政府機関のデータベースであり何の問題もないのですが、そのデータから Visual Capitalist の記者が作ったグラフを、適当に解釈して「感染リスクが高い」としたプレジデントオンラインの”記者の質”が問題の根元でした。

 

曝露リスクが高いだけで、感染リスクを評価したものではないことは、グラフを”普通に”見れば明らかです。

ADA の声明にも同じようなことが見て取れます。

 

今回の報告により、歯科医師の SARS-CoV-2 の感染率が極めて低いことから、 CDC と ADA の勧告が、感染を防ぐ上で有効であることを裏付けている。

曝露リスクが高いのは当然で、その曝露から感染しないようにとの勧告が”結果的に”正しかったことを強調しています。

繰り返し申し上げますが、あれだけ感染が拡大したアメリカで歯科医師の感染率が低い、ということは確かに素晴らしい結果だと思います。

今の ADA や CDC の暫定ガイダンスが正しかったんだ、とする主張は「今後もこのガイダンスを継続するぞ」という意思の表れでもあるように思えます。

今のガイダンスが、歯科医療の New Normal となるのでしょうか?

 

ADA のガイダンスでは、利用できる範囲で最高レベルのPPE、すなわちマスク、ゴーグル、フェイスシールドの着用を求めている。

また、ラバーダムの使用とバキュームの使用、超音波スケーラーではなく手用スケーラーを使用してエアロゾルを最小限に抑えることを求めている。

このように繰り返し「ガイダンスが良かったんだ!」と強調しています。

 

 

ADA のチーフエコノミストであり、ADA Health Policy Institute の副会長である Marko Vujicicic, Ph.D. は、

「歯科医療従事者は感染リスクが最も高い職業の一つに挙げられているが、他の医療従事者と比べて、感染率ははるかに低いという事実は偶然ではありません。

私たちは歯科医師の COVID-19 の発生率や、歯科医療に対するパンデミックの影響を引き続き追跡し、歯科医師や他の業界への情報提供に役立てたいと考えています」

と述べている。

この続報には期待しています。

 

まとめ

歯科医師の感染率が低くて良かった、のはその通りですが、このニュースリリースから、新時代の歯科医療のあり方(特に感染対策のあり方)、すなわち歯科医療の New Normal が見えてくるような気がします。

 

ADA がここまで暫定ガイダンスの正しさを強調している状況で、これまでのブログでも何度か言及している「(感染対策の合理的な)引き算」はどんどん難しくなると思います。

 

「持続可能な歯科保険医療の供給体制の維持・確立」のためには、多すぎてもダメ、少ないのはもっとダメ、”必要十分”な感染対策が望まれます。

その必要十分とはどこにあるのか、個人的には、研究への投資が必要な段階ではないかと思っています。

それがなければ我が国のガイドラインも、ADA のガイダンスに準拠したものになるでしょう(それで大丈夫ならいいのですが)。

 

つづき

ADA が診療報酬の増額を要求しています。

 

www.masaomikono.com

 

従業員にコロナ陽性者が出た、シアトル近郊の歯科医院の対応

シアトル近郊の Vashon 島にある、Langland Dental Associates という歯科診療所の従業員が COVID-19 である、と診断され、その後の対応について報道がなされています。

www.vashonbeachcomber.com

 

日本との相違点はあるものの、参考になる事例と思いますので、ブログに残して皆さんと共有したいと思います。

 

報道記事の詳細

感染判明までの経緯

10月1日、Langland Dental Associates の従業員が COVID-19 の検査を受けた。

10月2日、検査陽性が判明した。

当該従業員は最近、旅行をしており、その際に感染したと考えられている。

検査陽性が判明してからすぐに職場から離れ、自己隔離を開始した。

報道時点では、当該従業員には症状はない。

(河野私見、以下同じ)

なぜ検査をしたのか、また何の検査をしたのかは不明です。

おそらく PCR検査、または抗原検査だと思うのですが、、、

無症状患者に対する感度はとても低く、偽陽性では?と思わなくもありません。

 

感染判明直後の対応

当該従業員が診療を行い、密接に接触したと考えられた患者は 4 名。

彼らはその後、自宅隔離を開始している。

早期検査の信頼性が低いという懸念から、報道時点ではまだ検査を受けていない。

ジョン・ホプキンス大学の研究者による最近の研究で、SARS-CoV-2 の PCR 検査を感染初期段階で行うと、偽陰性になる可能性が高いことが分かっているからである。

ここでは PCR 検査と書かれていますから、PCR検査なのでしょう。

この検査をしない、という対応・判断は問題ないと思います。

 

感染判明後の経緯

診療所は今週中は閉鎖し、10月12日に暫定的に再開する予定である。

それまでの間、全スタッフは自宅隔離を行い、今後 PCR 検査を受ける予定である。

診療所内のすべての医療機器や環境表面は、専門的な手法で消毒する。

これらの追加対応は、公衆衛生行政機関(保健所)やADA、CDCによって文書化されたものでも要求されたものでもないが、Dr. Langland は、従業員らと慎重な対応をしており、追加対応が必要であると感じている、と語っている。

隔離期間は 10 日間、これは日本と同じですね。

他のスタッフは、日本で言うところの”濃厚接触者”には該当しない状況ですが、検査と隔離の指示が出ています。

日本であれば、濃厚接触者とは言えないので検査も隔離も必要なし、とされます。

環境表面の消毒は、日本では保健所から指示される項目です。

 

もし万が一、歯科医院で感染者が発生した時の対応はこちら ↓

www.masaomikono.com

 

歯科医院からの情報提供

 

Langland Dental Associates の HP には、検査結果が陽性であることが判明した後、Vashon Medical Reserve Corps や Emergency Operations Centerと協議して行った措置の概要が記されている。

HPによると、他の患者は当該従業員と接触しておらず、他の従業員においても、N95 マスクやフェイスシールド、グローブ、医療用スクラブなどを使用するように、とのADAの推奨に従っており、他の従業員のリスクもほとんどない、とのことである。

Langland Dental Associatesで感染したスタッフの人は、Dr. Langland によると、完全なPPEを身に着けていた。

 「我々は5月に診療を再開して以来、SARS-CoV-2が我々のコミュニティに存在し、今回のような事例が起こりうる、という仮定の下で診療をしている」と Dr. Langland は述べている。

また、「我々はウイルスを不活化する空調システムやエアロゾル低減システム、厳格なPPEのルールを導入し、CDCのガイドラインに準拠している。パンデミックの前でさえ、感染制御は私たちの診療の中核をなしていた。」と述べた。

 

 

Langland Dental Associates の HP

では実際に Langland Dental Associates の HP を確認してみましょう。

www.vashonislanddental.com

結構スッキリとしたデザインですね。 

 

トップページに 10月7日(水)10時00分投稿に投稿された、お知らせ文がありました。

 

お知らせ文詳細

従業員の検査結果で良いニュースがありました。

これまでのところ全て陰性です。

10月5日(月)に検査を行い、結果は10月6日(火)の夜に出ました。

10月9日(金)に再度検査を行い、その結果は10月12日(月)の開院前に判明する予定です。

 

以前報告したように、10月2日(金)に当該従業員が検査陽性であった後、この週末にCOVID-19 への対策を行いました。

今週は休診とさせていただきますが、今後も患者様や地域の皆様と、我々の行動履歴を共有していきたいと考えております。

 

まず、幸いなことに、感染した従業員は元気にしており、彼女が勤務していた日(9月29日 火曜日)に治療した 4 人の患者全員に、従業員が感染した旨の通知が出されました。

いずれの患者にも症状が出ていないことがわかりました。

4 人の患者と当該従業員は、感染症専門家のガイドラインに沿って自宅隔離しています。

”彼女が”と、女性であることを明示しています。

これは正直、無用心に思えなくもありませんが、行政の発表で女性であることが既に公然のこととなっているのであれば問題ありません。

ただ、感染拡大に必要のない情報でもあり、原則性別の公表は無意味だと思います。

 

第二に、他の患者さんは、感染した従業員とは接触していませんでした。

また、私たちの感染対策は高いレベルで実施しているため、他の従業員が感染した可能性はほとんどありません。

当院の従業員は、N95 マスクやフェイスシールド、グローブ、医療用スクラブを着用しています。私たちは、ADA のガイダンスに従っています。

 

第三に、オフィス閉鎖期間中は、MRC のガイドラインに沿って、医療機器や環境表面を含めた診療所全体の徹底した消毒を行っています。

 

第四に、感染していない他の従業員も全員、自宅隔離をしています。

10月5日(月)の検査結果は現在陰性で、9 日(金)に行われる 2 回目の検査で再び陰性になることを期待しています。

これらの検査の結果は次のステップに反映されますが、12日(月)には再開できるようにしたいと考えています。

2回目の検査が陰性であった場合、診療再開が可能となると伝えています。

 

私たちは、Vashon Be Preparedと信じられないほど優秀なチームと緊密に連携し、患者さんとスタッフの安全を最大限に確保するために、すべての適切な措置が取られていることを確認しています。

ご質問やご不明な点がございましたら、遠慮なくオフィスにお電話ください。

当院では、予定されているすべての患者様に積極的に電話をかけ、この情報をお伝えしています。

患者様に安心して治療を受けていただくことが私たちの最大の関心事です。

またお会いできることを楽しみにしています。

 

 

まとめ

この Langland Dental Associates に、地域住民からどのような反応が寄せられているのかは分かりませんでした。

しかし報道の内容は十分に中立であり、HP と院長である Dr. Langland のインタビューに沿った内容でした。

実際に歯科医院で感染事例が発生したとき、どこまで情報公開をするべきか、悩ましいことは事実です。

今回の Langland Dental Associates の公表内容は、一部不必要に感じられる部分もありましたが、概ね良好な結果をもたらすような気がしました。

 

ザ・クインテッセンス 10 月号に寄稿した論文に、実際に日本の歯科医院で発生した感染事例の詳細と、歯科医院からの情報提供について記載しております。

こちらの”リアル”な実態も合わせて、参考になさってください。

 

また、万が一感染事例が発生した場合、連絡をいただければ全面的に対応サポートします。

 

↓ お読みいただいていない方はこちらからご購入ください!!

www.quint-j.co.jp



 

CDC ”エアロゾル”の記載を削除!

先日、CDC が一度発表した声明を3日後に取り下げるという失態を犯しました。

それをもとにした報道で混乱が生じたことをご記憶の方もいらっしゃることでしょう。

 

ブログにもしておりますので、ご存知でない方は先にこちらをお読みください。 

www.masaomikono.com

 

さて、そのブログでも記載しましたが、取り下げた声明である 9月18日の声明では、以下のような記載がありました。

COVID-19 は主として感染者が咳やくしゃみをしたり、歌ったり、話したり、呼吸をしたりするときに発生するエアロゾル (aerosols) のような、呼吸器からの飛沫 (droplets)小さな粒子 (small particles) を介して広がる。

これらの粒子は鼻や口、気道、肺から吸い込まれ、感染の原因となる。

これがウイルスの主な感染経路と考えられている。

このエアロゾル、飛沫、小さな粒子、が何を指しているのか不明でした。

 

また、さらにこのような記載があり、「CDC が空気感染を認めた」というマヌケな報道へとつながりました。

飛沫 (droplet) や空気中の粒子 (airborne particles) が空気中に浮遊したままで他の人に吸い込まれたり、フィート以上移動したりする可能性があるという証拠が増えています(例えば聖歌隊の練習、レストラン、フィットネスジムなど)。

一般的に換気の悪い室内環境では、このリスクが高まる。

空気中の粒子、これも何なのかよく分かりませんでした。

ただ、それらを注意深く認識しておけば、内容的にはさほど問題のあるものではなかったのも事実です。

 

非専門家、一般市民向けには用語の定義をしっかり!

これまで本ブログでは”エアロゾル”という用語を用いる場合、「いわゆる」という接頭語を付けてきました(漏れはあるかもしれませんが...)

 

また、「エアロゾル」という用語は、日本環境感染学会の用語集には収載されているものの、学問領域によって定義が様々であったり、そもそも定義があやふやなまま論文に記載されていたり、あえてあやふやにしていたり、と問題がありました。

問題点についてはこちらをご参照ください↓

www.masaomikono.com

 

CDC 新たな声明

10月5日付けで CDC から新たな声明が発表されました。

混乱を招いた反省からか、CDC が新たに発表した声明では”エアロゾル”の文字が消えました。(ようやく...)

www.cdc.gov

どのような内容なのか、早速確認してみましょう。

 

COVID-19 spreads very easily from person to person

ウイルスが人から人へ、どのくらい簡単に広がるかは様々である。

COVID-19 の原因となるウイルスは、インフルエンザよりも効率よく広がっているようであるが、人に影響を与えることが知られている最も感染性の高いウイルスの一つである麻疹ほど効率的ではない。

これは以前の声明にもありました。

「麻疹ほどではないがインフルエンザよりも効率よく感染する」 は何を意味するのかというと、麻疹で見られるような空気感染はしないが、インフルエンザよりも広がりやすい、ということです。

 

COVID-19 most commonly spreads during close contact

COVID-19 に罹患している人の近く(6 フィート以内)にいる人、またはその人と直接接触している人は、感染の危険性が最も高い。

COVID-19 に罹患している人が咳やくしゃみをしたり、歌ったり、話したり、呼吸をしたりすると、呼吸器の飛沫(respiratory droplets)が発生する。

これらの飛沫の大きさは、大きな飛沫(目に見えるものもある)から小さな飛沫まで様々である。

小さな飛沫は、気流中で非常に速く乾燥して粒子(particles)を形成することもある。

エアロゾルという表記は無事なくなり、飛沫に統一されました。

その飛沫のサイズに着目した表記になっています。

最後の粒子、はよく分かりません。含みを持たせた表現になっています。

 

感染は主に、COVID-19 に罹患している人と他の人が密接に接触している時、呼吸器の飛沫に曝露されることによって起こる。

感染は、呼吸器の飛沫を吸入したり、鼻や口の中の粘膜などに付着したりすることで起こる。

これは従来通りです。

 

呼吸器の飛沫は COVID-19 に罹患した人から遠ざかるにつれて濃度が低下する。

より大きな飛沫は重力により落下する。

より小さな飛沫粒子は空気中に広がっていく。

時間の経過とともに、呼吸器の飛沫中の感染性ウイルスの量は減少する。

小さな飛沫と粒子が広がること、時間の経過とともに飛沫による感染の危険性が減少することを併記しています。

 

COVID-19 can sometimes be spread by airborne transmission

"airborne transmission" すなわち空気感染に関する記載です。

感染症の中には、空気中に数分から数時間漂う小さな飛沫や粒子に含まれるウイルスによって広がるものもある。

これらのウイルスは、感染した人から 6フィート以上離れた場所にいる人や、その人がその空間を離れた後に感染することがある。

このような広がりは空気感染(airborne transmission)と呼ばれ、結核、麻疹、水痘などの感染症が広まる重要な方法です。

これはその通りであり、従来の定義をおさらいしたものです。

 

特定の条件下(under certain conditions)では、COVID-19 に罹患している人から 6フィート以上離れた場所にいる他の人が(空気*)感染したように見える、という証拠があります。

これらの感染は、換気が不十分な閉鎖された空間で起こりました。

時には、感染者は歌を歌っている時や運動している時など、大きく呼吸をしていることもありました。

 はい、特定の条件下=換気が不十分な閉鎖された空間、です。3密です。

3密の条件下ではまるで空気感染のように感染する、ということです。

そうです、日本の皆さんにとっては何の目新しいものでもありません。

 

科学者たちは、 COVID-19 に罹患している人から発生した感染性のある小さな飛沫と粒子の量が、ウイルスを他の人に広げるのに十分なほど、このような状況下で濃縮されたと考えている。

感染した人は、COVID-19 に罹患した人と同じ時間帯に、同じ空間にいたか、去った直後にそこにいたことが分かっている。

これ、2月の段階で日本の専門家会議のメンバーは気づいていましたよ...

そして遅くとも3月下旬には3密を避けるよう、国民には知らされていました。

 

まとめ

先日のブログにも書きましたが、

「新型コロナウイルスは空気感染するのかどうか」

ではなく、

「新型コロナウイルスの感染様式を何と言えばいいのか?」

を議論するべきだ、と書きました。

 

CDC はそこの言及はしていませんが(私は「3密感染」推し)、はっきりと従来の空気感染とは違う、と区別するに至り、特殊な環境下が危険だ、と発信するようになってくれました。

日本発で、3密感染、をモッタイナイみたいにアピールしたらいいと思います。

 

トランプのアニキ、あなたの選挙運動は密なんですけど...

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朝日新聞デジタルより失敬しました

 

東日本放送の報道について

一昨日付けの Yahoo!ニュース で、以下のような報道がなされました。

 

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news.yahoo.co.jp

 

見出しには

歯科診療所内で感染の可能性も

の文字があります。

 

報道したのは宮城県で放送事業を行っている東日本放送です。

www.khb-tv.co.jp

 

記事内容

記事内容は以下の通りです。

 

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市内の歯科診療所に勤務する40代の女性の感染が確認されました。

この女性は先月30日に感染が確認されている30代女性の濃厚接触者で2人は同僚です。

診療所内でマスクせず十分な距離を取らずに会話をしていた可能性があるということです。

仙台市によると、この診療所では診療時にフェイスシールド・マスク・ゴーグルなどを着用していて、患者への感染の可能性は少ないとしています。

 

スタッフ→スタッフの感染が強く疑われる状況であったことが確認されていますが、スタッフ→患者の感染は現在のところ確認されてないようです。

 

さて、この記事の見出しは「歯科診療所内での感染の可能性も」でした。

確かに嘘ではないものの、誤解を招く表現でしょう。

 

一般の方がこの見出しを読み、その後記事を読まなかったらどうでしょうか?

記事を読んでも正確に状況を理解できるでしょうか?

 

ネット記事ですから扇情的な見出しをつけてクリック数を増やしたい気持ちも分からないではありませんが、報道の自由とはそういう意味ではないと思います。

自由は義務と表裏一体です。

正確な報道をするという義務を果たしてもらいたいものです。

その義務を果たして初めて、自由があると思います。

 

抗議・申し入れを

私では何の力もありませんので、しかるべきお立場にいらっしゃる方にお願いしたいと思います。

一つ一つ、面倒でもその都度対応しないと、知らぬ間に問題が大きくなってしまうかもしれませんから。

 

以前も報道機関に抗議する主旨のブログを書きましたのでよろしければこちらもどうぞ↓

www.masaomikono.com

 

CDC の迷走 問題の本質は「空気感染するかどうか」ではない

9月18日に米国CDC から、「How COVID-19 Spreads(COVID-19 がどのように広がるか)」という声明が発表されました。

 

それを受けて、様々なメディアが「CDCがコロナの空気感染を認めた」とマヌケな報道をしておりました。

それに対して、私は以下のように反応しました。

f:id:masaomikono:20200923231659p:plain

 

しかし直後の 9月21日、CDCがその声明を取り下げました。

www.cdc.gov

取り下げの理由として、以下のような記載がありました。

f:id:masaomikono:20200923232539p:plain

これらの勧告の変更の草案を誤って掲載してしまった、現在更新作業中である、とのことです...

一体どうなっているんでしょうか??

 

現在では 9月18日の声明は見ることができませんが、幸い私は(ブログにしようと)スクショを取っていました。

ご入用の方は facebook のメッセンジャー、または masaomikono*gmail.com(*を@にして)から連絡してください。

 

一体何が書いてあったのか、忘備録を兼ねて記載しておこうと思います。

 

9月18日に発表された CDC の声明

全部を記載すると長くなるので、9月21日の声明にない部分を中心に記載します。

 

感染経路

COVID-19 は主として感染者が咳やくしゃみをしたり、歌ったり、話したり、呼吸をしたりするときに発生するエアロゾル (aerosols) のような、呼吸器からの飛沫 (droplets)小さな粒子 (small particles) を介して広がる。

これらの粒子は鼻や口、気道、肺から吸い込まれ、感染の原因となる。

これがウイルスの主な感染経路と考えられている。

エアロゾル、飛沫、小さな粒子...

この辺りが何を指しているのか示されておりませんが、内容的には特に大きな問題はないように思います。

 

飛沫は表面や物体に着地したり、接触により移動することもある。

ウイルスが付着している表面や物体に触れた後、自分の口や鼻、目に触れることで感染することがある。

接触感染はウイルスの主な拡散方法ではない、と考えられている。

これは正しいですね。

接触感染がないわけではありませんが、相対的に飛沫等による感染が主体と考えられています。

 

飛沫 (droplet) や空気中の粒子 (airborne particles) が空気中に浮遊したままで他の人に吸い込まれたり、フィート以上移動したりする可能性があるという証拠が増えています(例えば聖歌隊の練習、レストラン、フィットネスジムなど)。

一般的に換気の悪い室内環境では、このリスクが高まる。

ここの「空気中に浮遊したまま」「6 フィート以上移動」などの文章が、確かに空気感染を想像させます。(なお、これらの証拠は工学系のエアロゾル研究者によるものです。)

ただ、この文章をよく読めば分かるとおり、3密の環境がハイリスクである、ということが書いてあります。

ようやく CDC も日本に追いついた、と言うことですね。

なお WHO は一足先に声明を出しています。こちらを参照ください。

 

どれくらい感染しやすいのか

COVID-19 を含む空気感染性のウイルス (airborne viruses) は、最も感染力が強く、拡散しやすい種類のウイルスである。

麻疹(はしか)のように感染力が強いウイルスもあれば、そう簡単には広がらないウイルスもある。

COVID-19 の原因となるウイルスは、インフルエンザよりは感染力が強いようであるが、麻疹ほど感染力が強いウイルスではない。

ここの文章も特に違和感はありませんね。

 

麻疹の感染力はとても強く、例えば感染者とすれ違っただけでも感染している想定で対処します。

インカ帝国やアメリカ先住民族も、持ち込まれた麻疹や天然痘によって悲惨な状態になり、滅ぼされたりしました。

参考図書↓

 

昨年も、サモアやトンガ、フィジーで大流行が起こりました。

↑ワクチン反対派に見せてやりたい

 

麻疹は空気感染に分類されますが、COVID-19 が麻疹ほどの感染力を持っていれば、満員電車であっという間に蔓延したことでしょう。

このことからも”麻疹のような空気感染”はしないことは明らかです。

 

自分や他人を守るには

可能な限り、他の人から少なくとも 6フィート離れた場所にいること。

パンデミックはストレスになることがある。身体的距離がとれている間は社会的なつながりを維持し、精神的な健康に気を配ることが重要である。

精神面に言及していることは特徴的です。しかし非常に重要です。 

 

他の人のそばにいるときは、マスクで口と鼻を覆う。

マスクは他の予防策の代わりになるものではない。

マスクは重要であるが、マスクだけに頼らないよう注意をしています。

要するに、マスクをしていれば身体的距離を取らなくてもいいわけではない、と伝えたいのでしょう。

 

石鹸と水でこまめに手を洗いましょう。

石鹸と水が手に入らない場合は、アルコール分が60%以上含まれている手指消毒剤を使用する。

 

病気のときは、家にこもり、他の人と隔離する。

 

空気清浄機を使用して、室内の空気中の細菌を減らす。

これはどうでしょうか?

私の知る限りでは、市販の空気清浄機にはウイルス除去効果はないとされています(ヨーロッパの換気工学のガイドラインから)。

空気清浄機についてはこちらをご参照ください↓

 

また、その説明のためのリンクがありましたが、飛べませんでした。

現在更新中とのことですから、経過を見たいと思います。

 

頻繁に触れる表面を定期的に清掃し、消毒する。

 

まとめ

このように、この CDC の声明を読んで「コロナは空気感染する!」と報道する度胸というか蛮勇には恐れ入った、と言うのが正直な感想です。

内容の解釈に問題があるのは報道機関のほうで、私個人的には別に CDC の声明の内容は悪くないと思いました。

 

問題の本質は「空気感染するかどうか」ではなく...

「新型コロナウイルスは空気感染するのかどうか」の議論ははっきり言って無駄だと思います。

 

と言うのも、こちらのブログに記載した文章ですが、 

飛沫〜飛沫核(エアロゾル)も飛沫感染〜空気感染も、元々くっきり分けられるものではなく、シームレスな概念です。くっきり分けられているのは対策の方です。

 

要するに、議論すべきは

「新型コロナウイルスは空気感染するのかどうか」ではなく、

「新型コロナウイルスの感染様式を何と言えばいいのか?」だと思うのです。

 

私は正直「飛沫感染」でいいと思いますが、どうしてもと言うなら「3密感染」推し、100歩譲って「3C 感染」推しで行きます。

 

今回の CDC とマスコミの混乱を見るにつけ、空気感染だの飛沫感染だのマイクロ飛沫だの言わずに、「3密」と一般国民にも分かりやすく表現した、西浦先生をはじめとした日本の専門家会議は、本当にすごいな、と改めて思います。

CDC もそうしたらいいのに。

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